“地元で何かしたい人”が大勢いないと、生活圏内は面白くならない。だから僕はこの場所をつくった。徳島県脇町の「うだつ上がる」
脇川さんとともにチャイ屋を始めた岑田安沙美(みねだ・あさみ)さん(27歳)の場合はこうだ。つい2年前まで姫路の小さな会社で、コワーキングスペース事業など企画系の仕事をしていた。個人でデザインの仕事も請けるようになり、もうしばらくは県外で働こうと思っていたが「高橋さんとうだつに出会って、徳島に帰っても何とかなる気がした」と言う。 うだつで出会った人たちからデザインの仕事が入り始める。
いつかチャイ屋をやってみたいと話す岑田さんに、古本市というイベントでチャイを出した後、パティシエの脇川さんを紹介されて「常設で二人でやってみたら」と背中を押したのも高橋さんだった。 高橋さんは言う。 「準備ができたらやりたいとみんな言うけど、いつ準備できんねんって話で。やるって決めたら、いやでも準備せなあかんので。チャイが飲めて、美味しいケーキ食べられる店なんて、この辺りに他にないぞと」(高橋さん)
もちろんそうして始めた活動が、すぐに本業になるわけではない。そうしたいかどうかも人によってさまざまだろう。本業にならなくたっていいのかもしれない。大事なのは、まずやってみたかったことにチャレンジできる場があること。 ほかにも「うだつの高橋さんと出会って、土日だけでも来たら?と言ってもらったのが、徳島に帰るタイミングだと思った」と話す若者が何人もいた。
20代女性たちの出会いから始まった「古本市」
この場所がまさに20代世代の出会いの場所になり、一つの形として結実したイベントに「うだつのあがる古本市」がある。2022年11月に第1回目の古本市が開催され、半年後の春に第2回、そして2023年10月、うだつの近くの「オデオン座」という劇場で、第3回が開催された。 主催は、うだつで知り合った23~28歳の女性6人組。リーダーで発起人の谷亜央唯(たに・あおい)さんはこう話す。 「もともと徳島には本屋や美術館など、文化的なものが少ないなと思っていて。同じことをSNSで投稿している徳島の女性がいて、気になっていたんです。うだつに初めて来たとき、その女性と会って意気投合して。古本市の仲間になるほかのメンバーともここで出会って、その日にはもうどんな場所が徳島にあったら嬉しいか、みんなで話していました。卒業して徳島で一度就職したけどうまくいかなくて。数カ月で辞めたとき、うだつがなかったら東京に出てたと思うんです。でもやっぱり徳島で何かしたいなと思っていて、うだつでみんなと会って今があります」
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