“地元で何かしたい人”が大勢いないと、生活圏内は面白くならない。だから僕はこの場所をつくった。徳島県脇町の「うだつ上がる」
変な大人に出会える、寄り道できる場所
たとえば取材の日、高橋さんは「今日はこの後、建築の仕事で福井に出張する」と話していた。パティシエの脇川さんも福井まで連れていくという。 「福井でショップやっている知り合いが、ポップアップをやらせてくれるというので、僕が打ち合わせしている間に、脇川くんがかき氷を販売したらいいなと思って。僕がもっているつながりも、自分だけがもっているより、できるだけ誰かと共有できるならその方がいいので」 高橋さんは23年近く徳島にいて、嫌でも自分が生まれ育った環境、大阪との違いを感じるという。 「この近くの高校は進学校で、みんな遅くまでスーパーの休憩室で勉強しています。でも何になりたいとか話さない子が多い。徳島におったら、いろんなものに触れる機会が圧倒的に少ない。自分は大阪にいた頃、無意識にいろんなものにふれていたと思うんです。チラシのデザイン一つとってもそうやし、学校帰りには毎日まちに出て遊んで、いろんな人に会うてたし。 徳島にいても、その環境は大人が提供しないとだめだと思う。いろんな仕事や遊び場にふれる機会を。うだつ上がるの意味って、そういうところにあるんかなとも最近思う」 だから、地元の人たちが“何かを始められる”場であることと、「ここでもこんなに面白いことや楽しいことができるで」と若い人たちに見せられることが重要。 「地元の高校生が制服でうだつに来てくれると、テンションあがります。最近、明石くんという男の子が学校帰りに店に来てくれるんですよ。うちで初めてブラックコーヒー飲んで、美味しかったんでまた来ましたって。『友達いないんですよねぇ』とか色々しゃべってくれて。そんな風に子どもが寄り道して、変な大人に出会える場所を増やしたい」 最近は、同じうだつの町並みの通りに、うだつの2号店を増やすことを考え始めた。 「2号店の店名はもう『よりみち』でもいいかなと思ってます」。 そう言って笑った。 ●取材協力 -みんなの複合文化市庭-うだつ上がる
甲斐かおり
【関連記事】
- 地元企業の共同出資で生まれた絶景の宿「URASHIMA VILLAGE」。地域の企業が暮らしのインフラを支える時代が始まっている 香川県三豊市
- ”シャッター街”と呼ばれた「柳ヶ瀬商店街」が、今ディープなおしゃれスポットに。定期イベント「サンデービルヂングマーケット」等で活気 岐阜県岐阜市
- レトロ商店街を地元の若者達が再生! セレクトショップやオフィスなどでにぎわい生み、鉄道会社とコラボイベントも 埼玉県飯能市・飯能銀座商店街
- 仲間4人と”ノリで移住”から4年、「自分たちで町を面白く」新移住者を歓迎する交流スペース「ポルト」の歩み 北海道上川町
- 転出超過つづきの危機から一転、転入者が10倍以上に!「おしゃれ田舎プロジェクト」の勢い、長野県小諸市が移住者から熱視線