なぜ日本で有名人が政治を語ることはタブーなのか?真剣な人を「あざ笑う」世の中を変えるには、ビスケットの値上げと戦闘機を一緒に考えればいい
■政治について語ると、なぜか嫌われる? 和田:苦しんでいる人がたくさんいるのに、政治を変えることができないのは、なぜなんでしょう? 安田:実は、そういう困っている人ほど投票に行かない、行けない、という事情もありますよね。 和田:前にもお話ししましたけど、私自身、かつては投票に行かなかった時期もありました。お金がないから新聞も取らないし、(SNSもなかったので)情報も入ってこない。行かなきゃとは思うけれど、バイトが忙しくて時間がとれない。何かの反対運動で座り込みやデモをやっている人たちのことも、うらやましく見てました。「デモに行ける余裕があっていいよね」って。 安田:座り込みやデモの現場に行くのにも交通費がかかる。非正規の多くは時給労働ですから、政治活動の時間は1円にもならない。政治について声を上げようにも、そんな余裕はない。 和田:その時間働いたら、いくらになるかなぁ、なんて考えたら一歩が踏み出せない。でも、今はそういう人にこそ、選挙に行ってほしいと思う。声を上げてほしい。政治家と対話するにあたって、いろいろ勉強して、少しずつ政治のしくみが見えてきた。おかげで本当に人生が変わりました。わかればわかるほど、腹立たしいこと、「おかしいんじゃない?」と思うことが出てくる。それでさらに調べる。読む。話す。 安田:歴史上の革命でも政変でも、そうした人々の思いが世の中を変えてきたんですよね。1人の力は小さくても、その意見や疑問、怒りは決して馬鹿にしちゃいけない。でも今って、怒ると怖がられるんですよね(笑) 和田:そうなんですよ! せっかくSNSが浸透して誰もが自分の意見を発信できるようになったのに、結局怒った人が損しちゃうじゃないですか。正当な怒りなのに、これは本当に腹立たしい。例えばジャニーズの問題を指摘して声を上げた松尾潔さん(音楽プロデューサー、ライター)もそうです。「おかしいじゃないか!」という彼の声に、みんなも後から追従したはずなのに、音楽業界から声が上がらない、誰も彼を擁護しない。触れようとしない。