なぜ同じ無観客で競馬、競艇はほぼ通常開催され競輪だけ中止が目立つのか?
実は、背景には、他の理由があるようだ。 開催することの意義、つまり、売り上げの問題だ。公営ギャンブルは売り上げの一部を社会に還元することでコンセンサスを得ているが、競輪の数字だけが芳しくない。 無観客によりファンはインターネット投票することになったが、その普及率がJRAの約75%、競艇の約60%に比べて競輪は約40%と一番低く、新型コロナ対策で対面発売中止となった影響を最も受けている。 関係者によると「競輪は、ミッドナイト競輪を買う若年層と年金生活の高齢者で客層は二分化した。ネットに疎い高齢者を取り込めていない。JRAは、年配者でも買えるようにガラケーからでも投票できるように工夫しているが、競輪はネット投票対策を講じてこなかったツケが回ってきている」という。 ネット整備の遅れが響き、競輪の売り上げの減少率は約60%もあるが、競艇は約30%。競馬は約15%減にとどまっている。 つまり、これらは国や開催の主催者である自治体へ納める金額に影響する。中央競馬は売り上げの10%以上を国庫納付金として納めており約3000億円にのぼる。 政府が、競技関係者に感染リスクのある競馬に開催自粛を強く求めない背景には、この“お金”の存在があるとされている。また競艇では日本モーターボート競走会、ボートレース振興会、全国24場の施行者などが合同で新型コロナ対策として6億円の寄付を表明している。一方の競輪は、売り上げが低迷しているから国や自治体への還元の点で弱い。 中止となった競輪ダービーでは、優勝賞金が6500万円と莫大で、シミュレーションをすると無観客では黒字にならないことが分かったという。 また競輪はJRAや競艇と違って開催の可否を決める地方自治体に任せっきりの傾向があり、業界として中央団体の求心力が弱く、まとまりがないという。 「JKA、全国競輪施行者協議会(全輪協)、選手会のまとまりが悪く、意見を集約できない。それが他団体との大きな違いでしょう。また管轄省庁も競馬は農林水産省、ボートは国土交通省、競輪は経済産業省とわかれていて、それぞれ省庁の競技に対するスタンスの違い、競技団体との力関係の違いも競輪の開催中止が目立つ理由かもしれませんね」という公営ギャンブル関係者の声もある。 このままいけば競輪の存続問題にさえ発展しかねない。 競輪を含む公営ギャンブルには、戦後の復興を支え、これまで社会福祉などに継続的に寄与してきたという一面もある。一部にはギャンブル依存症という副産物も産んだが、競技を問わず、大衆の娯楽として一定以上の成果を上げてきた。「ステイホーム週間」が叫ばれる中、ネット投票で、ファンが家にいる機会が増えているというプラス面もある。だが、無観客開催に感染リスクの懸念も残したまま。いまこそ社会に対して何ができるのかをギャンブル業界全体で考える必要があるのではないか。