ガス計画乱立のフィリピン、環境や漁業への悪影響懸念し、日本の金融機関に住民が支援中止要請
首都マニラから南へ約80キロメートルと比較的近距離にあるバタンガス州は、フィリピンでも特にガスエネルギー関連施設の建設計画が集中している地域だ。バタンガス州ではすでに1基のガス火力発電所と2つのLNG輸入基地が稼働。さらにガス火力発電所9基、LNG輸入基地4施設の建設が計画されている。 そうした中、国際協力銀など日本の金融機関にも厳しい目が向けられている。漁業関係者は、バタンガス市イリハン村でのLNG輸入基地の建設に際して、同基地事業の親会社であるAGPインターナショナル・ホールディングス(本社・シンガポール、以下AGP社)に出資する国際協力銀が環境面に関する検証を怠ったなどとして、同行のルールに基づき2023年12月に異議申し立て手続きをした。AGP社には大阪ガスも出資している。
異議申立書によれば、漁民はすでに生じている直接的な被害として、「土地の転換が拙速で、大規模な森林伐採が行われ、その結果として海岸線に大量の土砂が堆積している」「魚の生息地となるサンゴが損傷している」ことなどを指摘。「水質の悪化により漁獲高に悪影響が生じている」と主張している。また、今後生じる可能性の高い被害として、船舶による水質汚染や、海上交通量の増加に伴う油流出リスクの増大などがあるという。 ■違法行為による停止命令後も建設を継続
イリハンLNG輸入基地の建設ではトラブルも多発している。土地用途の転換に関する承認を得ずに進められたことから、2022年8月にはフィリピン政府の農地改革省は工事停止命令を出した。にもかかわらず、その後も工事は続けられ、LNG輸入基地は2023年5月に稼働を開始している。 こうした経緯を踏まえ、漁民らは国際協力銀に対して、異議申し立て手続きに踏み切った。申立書によれば、環境レビューの適切な実施や、生計手段の喪失への十分な補償の実施、出資持ち分の引き揚げなどを求めている。