久田恵「〈理想のすまい〉と移住した那須の高齢者住宅を6年で退所。今は東京の自宅できままなひとり暮らし。学生時代の友人との交流を楽しみに」
◆最期に過ごす場所を決めておく この先、さらに年齢を重ねて要介護状態になったら、《第二のわが家》のようなこの老人ホームに、私も入居することに決めました。 今すぐ入ると長生きした場合にお金が足りなくなる心配もありますから(笑)、自分ひとりで生活できる間は現在の家で過ごし、人の手を借りないと暮らせないようになったらお世話になろう、と。 私は放浪癖があるので若い頃からあちこちを転々としてきましたが、さすがにこの年齢になったら、これまでのように「なるようになるわ」では済まされません。自分の気持ちを整理して、どこで最期を過ごすかを決めておかなければ。 もしかしたら、私はこの老人ホームを終の住処にするために、東京に戻ってきたのかもしれません。
私に限らず、年齢を重ねて自由な時間ができたら、自分が最期に過ごす場所を見つけておくのがいいと思います。 これまで全国各地の高齢者施設を取材してきましたが、ひとくちに「老人ホーム」と言っても千差万別。居住者の自由な意思を尊重してくれる施設もあれば、管理がきびしく家族でも気軽に会えない施設もある。一概に、建物の外観がきれいだからいいというわけでもありません。 自分の足で動けるうちにお気に入りの施設を見つけておけば、見当をつけないまま心身ともヨボヨボになり、子どもに「近くて安い施設」へ入れられてしまうこともないでしょう。(笑) 私はこのホームで両親を看取り、どこで過ごすかによって晩年が幸せになるか不幸になるかが決まるのだと実感しました。 同居する家族のいないおひとり様にとって、自宅にしても施設にしても、終の住処が決まっているのはとても安心なこと。そういう安心感があればこそ、人生を最期まで楽しむことができるのだと思います。 (構成=内山靖子、撮影=本社・武田裕介)
久田恵