誰も説明できない「マイナ保険証はなぜ必要か?」、それでも必要だと断言するワケ
■ とうの昔から始まっている医療情報の二次利用 ──なぜ医療情報の二次利用のために、収集方法を一本化すべきなのでしょうか。 中島:医療情報の二次利用はまだまだ黎明期です。現時点で、医療施設間で患者の医療情報の共有はほとんどされていません。紙カルテのみならず電子カルテで電子化されているデータでさえも、個々の医療施設の中に閉じ込められているような状態です。 実際に、研究テーマによっては、私たちは複数の施設の患者の医療情報を収集し、ビッグデータとして用いることがあります。そのときに苦労するのは、データフォーマットの統一です。個々の病院で保管されている臨床情報の項目に、ばらつきがあるのです。 現在、国が構築している全国医療情報プラットフォームでは、データを流通させるために基本的な医療情報は標準化されます。これにより、医療ビッグデータを用いた研究が進展していくことも期待されます。 ──どのような目的で医療情報を二次利用するのでしょうか。 中島:医学を発展させるというのが、第一の目的です。 医学の歴史上、ヒトを対象とした臨床研究では、昔から臨床データを二次利用してきました。これは、紙の保険証の時代どころか公的医療保険がなかった時代から変わりません。明治時代から現在まで、アナログで脈々と受け継がれてきた臨床データの研究の賜物が、今、私たちが受けている最先端医療です。 これを聞くと、紙の保険証でもデータを使った臨床研究はできるだろうと思うかもしれません。でも、先ほど説明したように、データのフォーマットの問題もあります。 さらに、臨床データを電子化して共有化すると、ビッグデータとして使うことが可能になります。ビッグデータを使うことによって臨床研究は飛躍的に進みます。 また、医療情報の二次利用には、医学の発展以外にも影響を及ぼすことが期待されています。介護や健康産業などあらゆる領域に医療はつながっています。 つまり、医療DXの進展はさまざまな産業の発展を促す可能性を有しているのです。もちろん、医療以外の分野では、既に進行中のDXもあります。医療側が、その恩恵を受けることも十分あり得ます。 ──臨床データを二次利用した研究事例を教えてください。