誰も説明できない「マイナ保険証はなぜ必要か?」、それでも必要だと断言するワケ
■ 医療DXが実現しないと何が起きる? 中島:Amazonや百度(バイドゥ)の登場は、私たちの買い物の仕方をがらりと変えました。それまでの買い物は店頭に行って、限られた商品の中から欲しいものを選び、現金を払って重たい荷物を持って帰ってくるというしんどい作業だったかもしれません。 でも、Amazonや百度(バイドゥ)は、手元のスマートフォンに表示される無限の商品が掲載されたカタログから好きな商品を購入し、それが家まで配送されることを当たり前にしました。 加えて、これまでの購買履歴から、消費者が好みそうな商品を提案してくれるようにまでなり、私たちの生活は大きく変わりました。 デジタル化したデータを利用して、世の中の仕組みを変えることがDXです。 ──デジタル化が進まなければ、DXは起こらない、ということでしょうか。 中島:デジタル化は、DXの必要条件です。先ほど説明したように、日本は医療情報のデジタル化が進んでいるとは言い難い状態です。 例として、電子カルテ化率が挙げられます。2020年の調査によると、日本国内の医療施設の電子カルテ利用率は50.2%でした。半分近い医療施設が、紙のカルテを使っているということです。 このような状態では、医療DXは遅々として進みません。電子カルテと同様のことが、マイナ保険証にも言えます。マイナンバーカードを持っている人は多いと思いますが、それを健康保険証として利用している人は、まだそう多くはないと思います。 今後、できる限り多くの医療施設が電子カルテを利用し、できる限り多くの人にマイナ保険証を使っていただきたいと思っています。それにより、医療施設同士が電子カルテ情報共有サービス(※)を通じて、患者様の医療情報を共有することができるようになるからです。 (※)政府が構築中の医療DX基盤の一つ。医療機関間での電子カルテ情報の共有を支援するシステム。このシステムにおいて、マイナ保険証は患者の認証用カードとしての役割を果たす。 ただ、どうしてもマイナ保険証を使わない人、電子カルテを導入しない医療施設に対しては、従来の方法で対応をしなければなりません。 電子処方箋を導入しない薬局に対しては、これまで通り紙の処方箋を発行しなければなりません。電子カルテ情報共有サービスにアクセスしていない医療施設に患者を紹介する際には、紙の診療情報提供書、いわゆる紹介状が必要になります。 今回のような医療DXの基盤を構築するにあたっては、個々人、各医療施設が足並みを揃えることが、どうしても求められるのです。 健康医療サービスの効率化はもちろんですが、データの二次利用という観点からも、医療情報の収集方法を一本化し、医療DX基盤を構築していくことが望ましいと思います。