誰も説明できない「マイナ保険証はなぜ必要か?」、それでも必要だと断言するワケ
■ マイナ保険証反対派が見落としている視点 中島:医療機関や薬局は、2023年1月から電子処方箋の導入を順次開始しました。でも、「紙の処方箋があるから電子処方箋は必要ない」と思っている人が大多数を占めているのではないでしょうか。マイナ保険証に対しても「紙の保険証で困っていないからいらない」という状態だと思います。 これは、現時点で「本当の医療DX」を完全に想像できる人が、この世に存在していないために起こります。 でも、医療DXは「今」起こっているのではありません。「将来」、予想だにしないかたちで起こるのです。したがって、政府が医療DXについてきちんとした説明をすることは難しいでしょう。国民の納得が得られないのも、仕方のないことだとは思います。 けれども、医療DXの基盤構築を「今」進めておくことは非常に重要です。そうすることで、将来、医療や健康サービスの質が向上し、その恩恵を受けられることが確実だからです。 ──現行の紙の保険証の新規発行を停止する必要はあるのでしょうか。 中島:これには、少しでも早く医療データをデジタル化し、医療DX基盤をつくらなければという日本政府の焦りが見受けられます。 医療DXは、今や国際競争の時代に突入しつつあります。他国に先んじて医療DXを推し進めなければ、将来的に健康医療にかかわる技術や製品、サービスを海外から輸入することになります。逆に言えば、他国を出し抜けば、輸出する側に立てる、ということです。 医療の世界では、欧米を中心にデジタル化が進んでいる国があり、日本は周回遅れです。ただ、デジタル化はしていても、真の医療DXが起こっている国や地域はまだないと思います。 デジタル化競争では出遅れましたが、何とかここをキャッチアップしてDX競争で巻き返したい。それが日本政府の考えだと思います。 現行の健康保険証の新規発行を停止することが、正しいやり方か否かは、まだわかりません。答え合わせは、10年後、20年後になるでしょう。 ──デジタル化とDXは何が違うのでしょうか。 中島:デジタル化は、アナログをただ電子化するだけです。対して、DXは世の中の仕組みを変化させることです。 わかりやすい例は、先行してDXが進んだ小売業でしょう。