「娘が中毒」「学びのツール」 学習効果VS視力低下 子供のSNS、規制に賛否
子供たちの交流サイト(SNS)利用の規制を巡る議論に関心が集まっている。オーストラリアで16歳未満の利用を禁じる法案が可決され、国内にも波紋が広がった。若い世代の利用時間は年々伸びており、依存症や視力低下も問題化。「闇バイト」などの犯罪に巻き込まれるリスクとも隣り合わせだ。ただ、日常生活に浸透し、効率的な学習にも一役買っているため、規制の賛否は割れている。 【年齢で違い】子供の1日あたりのインターネット利用時間 ■娘が動画中毒に 「日本でも子供のSNS利用に制限をかけるべきだ」 こう語るのは、中学2年の娘(14)を育てる大阪府八尾市の主婦、和田詠美さん(51)だ。 娘のSNS利用には時間制限を課しているが、娘は利用停止後も学校支給のタブレット端末で趣味の動画を見ているといい、その〝中毒〟状態に頭を抱えている。 昨年10月には娘がSNS上で知り合った面識のない人と会おうとしていたことが発覚。和田さんは「たまたま確認して分かったからよかったものの、もし会っていて何か起きていたらと思うとぞっとする」と振り返る。 一方、「子供のSNS利用に歯止めをかけるのは親の役目」と話すのは、東京都台東区で8歳と5歳の娘を育てる40代の男性会社員だ。 娘には午前と午後の1時間ずつ、SNSの利用を認めており、制限時間を過ぎるとアラームが鳴るよう設定しているという。 男性は「SNSは子供の興味や関心を広げたり、学びを支えるツールになったりする」と教育的な効果を挙げた上で、「子供のSNS利用を監視するのはあくまでも親で、国に口出しされたくない」と語った。 ■16歳は1日6時間 こども家庭庁の令和5年度の調査によると、子供の平日1日あたりのインターネット平均利用時間は、2歳でも約1時間46分。16歳に至っては約6時間22分で、SNSが子供の生活に不可欠であることがうかがえる。 幼少期からのネット利用は、子供の視力に悪影響を及ぼす側面もある。文部科学省の調査(令和5年度)によると、裸眼視力1・0未満の割合は、高校生が67・80%。中学生(60・93%)や小学生(37・79%)、幼稚園児(22・92%)も高い水準となっている。 千葉大の藤川大祐教授(教育方法学)は子供のSNS利用について、「学習時間を奪いかねない」としながらも、「自分で考えたり、調べたりする手段であり、貴重なコミュニケーションの場にもなっている」と指摘。利用規制に関する議論には「子供の人権を尊重しながら、賢く学べるための最善の策を考えるべきだ」とする。