闇に包まれた「82人の死」――混迷ミャンマー、命がけで真相を語る市民たち
武器を取り始めた市民たち
バゴーの弾圧事件で九死に一生を得たター・ジーさんは、その後バゴーから脱出。いまは山間部の少数民族の武装勢力と合流し、軍事訓練を受ける準備をしている。 「バゴーは本当に住みやすい街だったんです。それがいまは軍が支配し、拷問や拘束が日常茶飯事になっている。私もバゴーに戻ったら、拷問を受けて死ぬことになる。それならば、せめて何かを果たして死にたいと思うのです」 クーデターが起きるまでは軍に敬意を持ち、軍人になりたいとさえ思っていたというター・ジーさん。凄惨な弾圧を身をもって経験し、軍は市民を守る存在ではなかったことに気づいたという。非暴力を掲げ、民主化運動に携わっていた若者は、次々と一線を越え、武器を取って軍と戦うことを選び始めている。 ミャンマー市民との回路として開設した特設サイト(What’s Happening in Myanmar?)には、今も情報や動画が寄せられ続けている。映像には、軍への憎悪と絶望にかられ、戦闘に突き進む市民たちの姿が映し出されている。それを「テロリスト」と見なして、圧倒的な軍事力で抑え込もうとするミャンマー軍がいる。このままミャンマー情勢が泥沼化していくのを、世界は座して見続けるのか。 ※本記事は「NHKスペシャル 混迷ミャンマー 軍弾圧の闇に迫る」(8月22日放送)に対し、市民の証言などを加え、再編集したものです