ひと言で言えば、「このクルマ、無敵」ランドクルーザー250を500kmテスト
実質的にランドクルーザー・プラドの後継モデルになるランドクルーザー250。70、300シリーズに新型250が加わったことで、ランドクルーザーシリーズが完成したわけだ。開発テーマは「原点回帰」。陸の王者に相応しいオフロード性能はすでに確認済み。今度はオンロードでの走りをチェックした。 TEXT:世良耕太(SERA Kota)PHOTO:長野達郎(NAGANO Tatsuo/ニューモデル速報) 2.8L直4ディーゼル+8速ATは、巨体を悠々と走らせる トヨタ・ランドクルーザー250は、300と70の間に位置するランドクルーザーの中心として、「質実剛健なオフローダー」という本来の役割に原点回帰した。オフロードでの走行性能については、さなげアドベンチャーフィールド(愛知県豊田市)で確かめている。250はオフロードになじみのないドライバーにとっても、扱いやすく、安全に楽しく運転できる能力を備えていることは確認済みだ。 今回は、そのランクル250をオンロードに持ち出し、250にとっては本来メインステージではないはずの環境で実力を確かめた。ランクル250にはガソリンエンジン車とディーゼルエンジン車の2タイプがあるが、ロングドライブに連れ出したのはディーゼル車である。ガソリン車は2TR-FE型の2.7L直4自然吸気エンジン(最高出力120kW、最大トルク246Nm)と6速ATの組み合わせなのに対し、ディーゼル車は1GD-FTV型の2.8L直4ターボエンジン(最高出力150kW、最大トルク500Nm)と8速ATの組み合わせとなる。 快適そのものの高速巡航、そして驚異の燃費 東北自動車道の蓮田SAでハンドルを受け取り、西那須野塩原ICで降りて約70km離れた西会津まで山道をたどって向かい、そこから引き返すルートを選択した。オフロードではローレンジ(L4、低速4WD)に固定し、フロントのスタビライザーをディスコネクトしてフリーにし、モードセレクトスイッチを操作してオフロード走行支援のモードを切り換えたり、センターデフやリヤデフのオンオフを切り換えたりしながら走った。 オンロードではモードセレクトのダイヤルは一切触っていない(触る必要がない)。フロントスタビライザーのディスコネクト機構であるSDMはオンの状態(つまり、スタビを効かせた状態)、かつハイレンジ(H4、高速4WD)モードで走った。 エンジンとトランスミッションの進化点について触れておこう。1GD-FTV型の2.8L直4ターボエンジンは前型にあたるランドクルーザー・プラド(150)と同型だ。ただし、ターボチャージャーは変更。タービンの羽根車を小さくして低速域のレスポンスを向上させた。コンプレッサーは効率を高め、前型と同じ150kWの最高出力を維持している。 トランスミッションは6速ATから8速ATへと段数を増やした。新旧で各段の変速比と最終減速比から導き出せる総減速比を見比べてみると、1速は総減速比を約12%大きくして発進時の蹴り出しの強さを得ようとしていることが読み取れる。一方で、最高段同士で比べると8速ATのほうがわずかに(約3%)総減速比は大きく、高速巡航時のエンジン回転数を低くしようとはしていないことがわかる。 変速比幅(レシオカバレッジ)は6速ATの約6.2に対し、8速ATは約6.8だ。レシオカバレッジが大きくなったことよりも段数が2つ増えた影響が大きく、各段のステップ比は小さくなり、加速していく状況では、アップシフト時のエンジン回転の落ち幅が小さくなっている。つながりがスムースに、リニアリティが高くなっているということだ。 ランドクルーザー250のエンジンとトランスミッションの振る舞いには感心した。エンジン回転が一気に高まるせいでグワンとエンジンがうなるきらいはあるものの、確かに蹴り出しは力強く、2.4t超の車体(今回の試乗は3名乗車+撮影機材を含む手荷物を積載)を軽々と発進させる。 250の8速ATはロックアップクラッチを従来の単板から多板に変更して(クラッチをスリップさせながら駆動力を伝達する)フレックスロックアップの領域を拡大。発進時以外は全域でロックアップできるようにした。 効率(つまり燃費)を追求したわけだが、効率一辺倒ではない証拠に、変速時は意図的にユルさを残し、ジワリと次の段に切り換える制御としている。そこがシャキッとしているけれどもガチガチではない、どっしりゆったり構えたランクル250のキャラクターとマッチし、ドライバーに心地良さをもたらす。適度に緩い変速制御は、「このクルマ気持ちいいなぁ」と感じさせる重要な要素になっている。 力強く発進した250はストレスなくスムースに巡航域まで達する。3車線の中央車線を80~90km/hで淡々と走っていると、蓮田SAでリセットした平均燃費計が16.0km/Lを表示するのが目に入った。先に伝えておくと、西那須野塩原ICで降りて西会津まで走り、戻ってまた東北自動車道に乗り、川口JCTを先頭にした約18kmの事故渋滞を経験して都内に戻って450kmを走行した際の平均燃費は13.7 km/Lだった。望外に良好な燃費は、ランクル250をロングドライブに連れ出して感心した事柄のひとつである(道中、DPFの再生を行なう場面もあった)。 加速側で100km/hに到達した場合は7速1800rpm付近、100 km/hをわずかに超えると8速に入り、そこから車速が落ちても100km/hでは7速に落ちず、8速を維持したまま走る。そのときのエンジン回転数は1500rpm付近だ。この状態ではエンジン音よりもロードノイズや風切り音が支配的となり、総じて静かで、快適そのものである。同乗者との会話もストレスなくできる。 制限速度が120km/hの区間では120km/hでの巡航も試した。高速域での加速でももたつきはなく、グイグイ加速する。120km/hでのエンジン回転数は8速で1800rpm弱といったところだ。120km/hでも騒々しくはなく、室内は平穏そのものである。ドライバーを含め、乗員を不安にさせるような揺れはないし、ステアリングホイールに軽く手を添えているだけで着実に前に進んでくれる。レーダークルーズコントロール(全車速追従機能付)とレーントレーシングアシスト(LTA)をオンにすれば、さらに運転のストレスは軽減される。 結論を言うと、ランクル250で行なう高速移動はまったくの疲れ知らずだった。このクルマはオフロードで高い身体能力を発揮し、オンロードではドライバーを疲れさせない。なんとも頼もしいクルマである。 真のオールラウンダー。ゲリラ豪雨もなんのその 高速道路で感じたランクル250に対する好印象は、山道を走り回ってさらに強くなった。急な上り下りの勾配と半径の小さなカーブが組み合わさった区間では、大きな車体と重たい車重が災いしてペースが落ち、後続車をフタするような状況になりかねない。ところが250はそんな心配は無用で、むしろ流れをリードするようなペースで走ることができる。 重すぎず軽すぎず、適度な操舵力で応えてくれるステアリングを切ると、イメージどおりにクルマの向きが変わる(油圧アシストの前型や300と異なり、250は電動パワーステアリングを採用)。グラリと揺れることもなく、反応の遅れも感じさせずリヤが間髪入れずに追随して、長く大きな車体を意識することなくカーブをクリアする。 下り勾配で感心したのは、状況を読んで自動的にシフトダウンし、適度なエンジンブレーキをかけて減速度を発生させてくれることだ。下り勾配で空走感があると不安がつのるが、適度な減速度が発生することで安心感につながる。このとき、エンジン音の変化と前後Gのわずかな変動でシフトダウンしたことをドライバーに伝えてくれるのがいい。 ランクル250は走行状況とドライバーの気持ちを読み取り、先手を打ってクルマを安定方向に導いてくれる。シーンにもよるが、黙ってやらず、サポートしていることをドライバーに伝えることも大事。助けられているのを実感することで、クルマへの信頼感が増す。ランクル250はそう気づかされるシーンにあふれている。 視界の良さ、見切りの良さも安心、快適なドライブにつながっている。途中、片側1車線の国道を外れてキャンプサイトに向かう砂利道に踏み込んでみた。すると、途端に大粒の雨。いわゆるゲリラ豪雨というやつである。その場での撮影は諦めてUターンしようとしたが、奥に進めど適当なスペースがない。仕方なくバックで100mほど戻ることにしたが、フロントウインドウもリヤウインドウも叩き付ける雨で視界は極悪だった。 大きなサイドミラーがもたらす視界とセンターディスプレイに映る高解像度の映像が頼りだったが、これが大層役に立った。車幅感覚がつかみやすいように設計されているのだろう。蓮田SAから始まった数時間のつきあいで、ランクル250の車両サイズが身体に染み込んでおり、極悪の視界でも躊躇なく、鮮明な画像の助けを借りながら、カーブした砂利道を無事に後退することができた。 ゲリラ豪雨をはじめ、災害が増えている昨今の状況を考えると、ランドクルーザー250、頼りになることこの上ない。悪路走破性の高さは言わずもがな。オンロードでは疲れ知らずで、長時間・長距離移動も何のその。ひと言で表現すればこのクルマ、無敵である。真のオールラウンダーとはランクル250のことを指すのだと、さっきまでの雨が嘘のように晴れ上がり、外気温度計が30℃をゆうに超えても優秀なエアコンのおかげで快適な環境を保った室内で、そんなふうに思った。 トヨタ・ランドクルーザー250 ZX "First Edition"(7人乗り) 全長×全幅×全高:4925mm×1980mm×1935mm ホイールベース:2850mm 車重:2400kg サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式 Rトレーリングリンク車軸式 駆動方式:4WD エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ エンジン型式:1DG-FTV型 排気量:2754cc ボア×ストローク:92.0mm×103.6mm 圧縮比: 最高出力:204ps(150kW)/3000-3400rpm 最大トルク:500Nm/1600-2800rpm 過給機:ターボ 燃料供給:コモンレール式筒内燃料直接噴射 使用燃料:軽油 燃料タンク容量:80L トランスミッション:8速AT WLTCモード燃費:11.0km/L 市街地モード8.5km/L 郊外モード11.0km/L 高速道路モード12.6km/L 車両価格:785万円
世良耕太