吃音で諦めた夢を「注文に時間がかかるカフェ」批判乗り越え3年で全国約50か所で開催「私みたいに悔しい思いをしないで」
── 批判的…どんな声だったのでしょう? 奥村さん:「今まで自分たちは吃音を隠して生きてきたのに、大々的に吃音者のカフェを開かれたら世間にバレてしまう」といった声です。その気持ちもわかるのでつらかったですが…そういったメッセージはだんだん減っていって、今はもう来なくなくなりました。多分心配していた方というのは、吃音者の批判をされることを恐れていたんだと思います。たとえば注文に時間がかかるカフェの動画が上がったときに、コメント欄に昔の私が言われたような「気持ち悪い」といった心ない言葉が並んで、それを目にするのを怖がるなど。
でも、実際に動画が上がったときのコメントは、好意的で温かい言葉ばかりでした。「頑張ってください」「応援しています」という優しいコメントが多くて、それを目にした方たちは「自分が想像しているより、吃音をオープンにしても受け入れてもらえるのかも」と感じてもらえたんだと思います。
■企業や学校にも広がる「注文に時間がかかるカフェ」の輪 ── お客さんも皆さん熱心にスタッフの話に耳を傾けていて、支援の輪が広がっていきそうですね。
奥村さん:ありがたいことに企業からの支援の申し出をいただくこともあります。また、社員食堂でカフェをやってほしいという依頼もありました。毎年新入社員が何百人もいるような大企業なのですが、吃音者の割合が100人に1人と言われているので、おそらく新入社員の中にも1人くらいはいるだろうと考えていらっしゃって。そういった方にも理解のある会社で安心して働いてほしいという社内アピールが目的でした。ほかにも、「大学生に吃音のことを知ってほしい」という大学の先生からの要望があり、大学の文化祭でカフェを開催したこともあります。
──「注文に時間がかかるカフェ」を続けて3年目。新たな課題や目標などはあるのでしょうか? 奥村さん:あります!今までは企業や学校、お店から依頼を受けてその場に行くことが多かったのですが、それだとどうしても都市部に偏ってしまって。開催したいと思っている地方の学生たちになかなかチャンスをあげられない、というのがジレンマでモヤモヤしていました。都市部と地方では吃音に対する認識の差があると、各地を訪れて実感しているので、今年は呼ばれなくても自分でその場所に行くようにしたいと思っています。「ここでカフェを開催したい!」と声を上げる人がひとりでもいたら、クラウドファンディングなどで資金を集めてその場所へ行きたいと考えています。