吃音で諦めた夢を「注文に時間がかかるカフェ」批判乗り越え3年で全国約50か所で開催「私みたいに悔しい思いをしないで」
■「いらっしゃいませ」と「ありがとう」は言わない ── 実際に「注文に時間がかかるカフェ」を開いてみてどんな気づきがありましたか? 奥村さん:まず、すごく楽しかったです。お客様の反応も気になったのですが、意外と皆さん喜んでくださいました。私の吃音は“あ行”が言いにくいという症状なのですが、接客だと「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」など“あ行”で始まる言葉が多いんです。なので、「こんにちは」「また来てくださいね」と言い換えをして接客をしたらそれが好評で、「よかったよ」と言ってくださる方がほとんどでした。
自分の中で、苦手なもの=嫌いだと思っていたんです。吃音があって話すのが苦手だから、きっと自分は話すのが嫌いなんだろうと。ところが接客を経験してみると、意外と苦手なことでも嫌いとは限らないということに気がつきました。同じように参加者も、話すのが苦手だったとしても別に話すこと自体が嫌いなわけじゃない、という気づきがありました。 ── カフェは全メニュー無料ですよね。最初から無料だったのですか? 奥村さん:はい、最初から無料でした。お金を稼ぐ目的で始めたわけじゃなくて、接客体験へと一歩踏み出すきっかけにしたかったので、たとえばコーヒーをこぼしたり、どもって何もしゃべれなかったとしてもクレームが来ないようにと考えて、無料にしました。
── そこからどうやって今のように日本各地での開催へと広まっていったのでしょうか。 奥村さん:都内のシェアハウスで2回目のカフェ開催をした様子がテレビで全国放送されて、その後「地方でも開催してほしい」というメッセージをいくつかいただいたんです。まさかそんな広がりを見せるとは思っていなかったのでびっくりしました。自分以外にも吃音があって接客に挑戦したい人がこんなにもいっぱいいるとは思っていなかったんです。今まで24都道府県で開催しました。東京や大阪では複数回開催しているので、トータル回数だと50か所近くになります。