田中圭の愛される力、そしてお芝居のルーツ エルナードのある街で育った少年時代
「自由でいいんだ」芝居の楽しさに気づけた
なんの変哲もない下町暮らしを送っていた田中少年が、芸能界に入るきっかけとなったのがオーディションだった。 「母親が応募したオーディションで最終選考まで残ったことがきっかけで、今の所属事務所に入れたんです。それで何となく言われるままレッスンを受けていたら、お芝居が楽しくなってもっとやりたいなって思ったんです」 そして今もやはり演じることはとても楽しいという。どこがどのように楽しいと感じているのだろうか。 「楽しい要素はいっぱいあると思うのですが、今の自分の仕事に対する楽しさとそのとき抱いたお芝居楽しいなは、また違った感覚だったと思います。あの頃は単純にお芝居って奥が深いなと思うと同時に自由でいいんだって気づいたことが大きいですね」 自由とはどういうことだろう。 「たとえば最初の頃は、もっと上手くやらなきゃいけない、もっと表現をしなきゃいけない、伝えなきゃいけないと、いろいろと難しく考えていた面もあり。でもそんなことないんだよ、お芝居はと、教えてくれた先生がいて、その楽しさに気づけました」 楽しく取り組んできたとはいえ、すでに20年以上キャリアを重ねる中で当然壁にぶつかることもたくさんあったと振り返る。どう乗り越えてきたのか。 「やるしかないです。仕事にはいろんな方が関わっているので、いざ走り出したらもう逃げられません。そこで何か悪い評価を受けようが次の仕事があるので振り返ってもいられないし、自分の中で常に全力でやり続けるだけでした。その先に何が待っているかもわからない状態で、それでもやっぱりやるしかない。壁にぶつかってしんどくて、この壁超えられませんなんて言っても誰も待ってくれないので。超えられなくてもやるしかない。もがきながらでもやらないといけない」
人間でも難しい演技こなす俳優犬ベックとの共演
そして今回は映画『ハウ』(犬童一心監督、8月19日公開)で初めて動物との本格共演が実現した。人と犬との関係を描いた物語で、田中は婚約者にフラれ人生最悪な時を迎えた市役所職員・赤西民夫を演じる。横浜で一人空虚な日々を送る中、飼い主に捨てられたワン!と鳴けない真っ白な大型犬を飼うことになってしまう。 「犬童監督とお仕事をしてみたかったので出演が決まったとき、喜びはもちろんありましたが、台本を読んで、いや~これ大変だぞ。出来るの?って正直思いました。小さい頃から犬を飼っていたので犬のことは少しはわかっているつもりでしたが、台本に書かれている内容が内容だったので。僕ら人間でも難しいことを当たり前に犬に求めているから(笑)」 そう、今回共演した動物とは犬。撮影当時は1歳4ヵ月だったという俳優犬ベックだ。 「目線ひとつにしても、僕と向き合って心通わせるように台本には書いているけど、そもそも目合わせるの大変だみたいな(笑)。本当に心配でしたが、いざ撮影して出来上がった作品を見たら、ベックは素晴らしく、本当にハウでしかなかった。感動しました。監督をはじめスタッフのみんなもベックのことをすごいなって」