火野正平 愛車「チャリオ」で日本各地へ、HOBOスタイルで巡ったこころ旅
著名人の訃報が続いた2024年であった。ドラマや音楽番組で昔から見ていた名優やアイドルの訃報がテレビのニュースやSNSで流れるたびに驚き、寂しさでなんともやりきれない気持ちになった。特に悲しかったのが、火野正平氏の突然の訃報であった。享年75歳。早過ぎます。生き方もそのスタイルも大ファンでした。 【写真はこちら】色男で名をはせた火野正平さん、1970年代のロン毛&にジーンズからビーニー帽が似合う2020年代まで 2024年11月20日に火野正平氏の訃報が流れた時、テレビのワイドショーや芸能週刊誌、SNSでは若い頃のプレイボーイぶりばかりをこぞって報道したが、いやいや、それだけじゃあないでしょう。火野正平の魅力といえば唯一無二なそのファッションセンスの良さだ。あれほど自分のスタイルを持ったお洒落(しゃれ)な大人の男はいない。 ロン毛にジーンズをはいてうつろな目でポーズをとる、ちょっと若い頃のショーケンや松田優作を思わせる1970年代のやんちゃな火野正平(萩原健一氏は『傷だらけの天使』の亨役=※文末参照=に火野正平を所望していたらしいが大河ドラマ『国盗り物語』の秀吉役でブレークして忙しくなりスケジュールがとれなかったそうだ)も、確かに「こりゃあ女性が放っておけないな」だが、近年の火野正平氏の魅力といえば、NHKBSの「にっぽん縦断 こころ旅」である。
■「ファッション」ではなく「スタイル」
「にっぽん縦断 こころ旅」は、火野正平氏が視聴者から送られた思い出の場所をつづった手紙を読んで、自転車でその場所を目指して全国各地を訪れる紀行番組だ。この番組での火野正平氏のファッション、いや、ファッションなんていう陳腐な呼び方ではなく、まさに「スタイル」と言ったほうがふさわしい格好が実に格好いい。あえてファッション的に言うとしたら、「HOBOスタイル」である。 HOBO(ホーボー)とは、19世紀後半から20世紀初め頃の不況下の米国で、家を持たずに鉄道に無賃乗車しながら仕事を求めて渡り歩いた貧しい労働者を指すスラング。彼らの自由な生き方はボブ・ディランやウディ・ガスリーなどが音楽として歌い上げ、ビート詩人のジャック・ケルアックが文学として書き上げるなど、その後の米国の若者文化に多大なる影響を与えた。 HOBOたちのユニークな服の着こなしのセンスや生活スタイルを、ファッションとして巧みに取り入れた格好が「HOBOスタイル」である。例えば、チャイナ服や刺し子の服などエスニックなテイストにアウトドアウエアやワークアイテムをミックスして着こなすなど、ヒッピーやボヘミアンスタイルのように自由でリラックスしたムードが特徴だ。ブランドでいえば「ポータークラシック」や「キャピタル」、「ヴィズヴィム」などの服がHOBOスタイルだ。