火野正平 愛車「チャリオ」で日本各地へ、HOBOスタイルで巡ったこころ旅
■「天性の人たらし」 すべてに分け隔てなく平等に
昔、雑誌「アンアン」の「大人の男。」という特集号で西島秀俊や大沢たかお、井浦新、大森南朋といった並みいるイケメン俳優をさしおいて、大の「にっぽん縦断 こころ旅」ファンの作家の柴崎友香さんが「火野正平がモテる理由」というエッセーを寄稿していた。確か火野正平氏の魅力は「大人の女性も若い女性もおばさんもおばあちゃんも小さな子どもも、犬にも猫にもバッタにも蛇にも道端に咲いている草花にも、すべてに分け隔てなく平等に接する」うんぬんとお書きになっていた。 まさにホントにその通り。火野正平氏を「天性の人たらし」とはよく言ったものである。ちなみに筆者が「にっぽん縦断 こころ旅」で一番好きだった回が、旅先で出会った小学生の女の子に気に入られて一緒に目的地の丘の上まで行くのだが、実はその子は体が弱くて激しい運動は禁止されていたことを後から聞いて、「ごめんな。なんで言ってくれなかったのよ。ここまで一緒に登ってありがとうね」と言って、風に揺れる稲穂を見ながら「ほら、あれが風の足跡だよ」というシーン。ジンときちゃいました。 フリーダムな生き方とスタイルで、まさに現代のリアルHOBOだった火野正平氏。もうあの決めゼリフが聞けないのが悲しくてやりきれません。人生、下り坂最高! 文:いであつし ※『傷だらけの天使』は1974年~75年にかけて日本テレビ系で放送された探偵ドラマ。2人の若者(木暮修と乾亨)の怒りと挫折を描いた。(乾)亨は萩原健一演じる木暮修の弟分にあたる。
いであつし
ライター、コラムニスト。1961年静岡生まれ。コピーライターとしてパルコ、西武などの広告を手掛ける。雑誌「ポパイ」にエディターとして参加。大のアメカジ通として知られメンズファッション誌、TV誌、新聞などで執筆。「Begin(ビギン)」、「LaLa Begin(ララビギン)」などで連載コラムを持つ。 ※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。