職場にいる「悪意なく怒らせる人」「空気が読めない人」は発達障害なのか?
環境の変化によって発達障害の症状が現れたAさん
ある企業の研究部門に専門職として入社したAさん(男性30代)は、結果も出しながらいきいきと仕事をしていましたが、その成果が認められて管理職に就いた途端、仕事に集中できなくなり遅刻や欠勤が目立つようになりました。 のちに、Aさんには、発達障害の1つである自閉スペクトラム症の“傾向”があることが分かりました。自閉スペクトラム症には、興味の対象が限られていたり、イマジネーション・コミュニケーションが得意でなかったりという特徴があります。Aさんの場合は、管理職になって外部の人や部下とのコミュニケーションの機会が増えたことでストレス過多となり、仕事への集中力が切れ、勤怠が乱れるというストレス反応が現れました。環境への適応が難しくなったということです。 「発達障害グレーゾーン」のグレーゾーンとは、Aさんのような発達障害の傾向がある場合を指します。発達障害をブラック、定型発達(健常者)をホワイトとした場合、両者の間にある領域が「グレーゾーン」になります。 発達障害の特性を濃度にたとえるなら、ブラックに近づくほど発達障害の明確な特性となり、ホワイトに近づくほど個性ということになります。グレーゾーンは、発達障害の特性そのものが明確にあるわけではなく、環境などにより特性が強くなったり弱くなったりします。 グレーゾーンの中でもブラックに近い場合は、発達障害と診断されることもあれば、されないこともあり、それがグレーゾーンの難しさの1つとなっています。次回は職場でのサポート方法について見ていきましょう。
※本記事は『発達障害グレーゾーンの部下たち』を再構成したものです。
執筆:舟木彩乃(ストレスマネジメント専門家)