職場にいる「悪意なく怒らせる人」「空気が読めない人」は発達障害なのか?
発達障害はグラデーション
発達障害という言葉が一般的に浸透している中で、「自分は発達障害かもしれない」と思って、意を決して医療機関を受診する人が多くなっています。しかし、診てもらってもはっきりした診断名がつかず、「発達障害の傾向がありますね」とか「グレーゾーンですね」などと曖昧なことを言われることがあります。 医療機関では、発達障害の診断は、問診(現在の困りごとや幼少期の様子、場合によっては家族の話や学生時代の成績表など)や検査(知能検査や心理検査など)などによって総合的に行われます。発達障害の分類やそれぞれの疾病の名称には、アメリカ精神医学会によって作成されている「DSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, DSM-5)」が、日本を含めて世界的に使われています。なお、改訂版として、『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』(邦訳2023年6月)があります。 また、世界保健機関(World Health Organization, WHO)による国際疾病分類の「ICD-11(International Classification of Diseases 11th Revision The global standard for diagnostic health information)」というマニュアルも、広く利用されています。 DSMやICDという複数のマニュアルがあるように、疾病の分類や診断基準も1つではありません。時代とともに疾病に関する考え方も変容していくことから、両書ともに改訂版が出されると内容も変わります。「発達障害」の診断基準も、絶対的なものがあるというわけではないのです。 人には、適応できる環境(あるいは時代)と適応できない環境があり、環境によって、発達障害の症状が現れたり現れなかったりします。そのような例を1つ紹介します。