「最強硬対応」予告の金正恩氏、年初のミサイルでトランプ氏牽制 ロシア後ろ盾
【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮は6日、極超音速ミサイルの可能性がある弾道ミサイルを発射した。米国に「最も強硬な対応」策で臨む戦略を表明した金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記がトランプ次期大統領の20日の就任を前に、核・ミサイル開発の加速で日米韓に対抗していく姿勢を鮮明にした。 金正恩氏は昨年末に開かれた2025年の重要政策を決める党中央委員会拡大総会で、日米韓の安全保障協力体制について「侵略的な核軍事ブロックへと膨張している」と主張した上で「最強硬対米対応戦略」を打ち出した。今回のミサイル発射で、この戦略の一端を行動で示した形だ。 総会では、ミサイル開発を担う金正植(ジョンシク)党軍需工業部第1副部長を党中央軍事委員に登用し、人事でも核・ミサイル開発を優先する姿勢を明確にした。 トランプ氏は金正恩氏と首脳会談を重ね、親密さを誇示してきた。これに対し、金正恩氏は昨年11月の演説で対米交渉を振り返り、「行けるところまで行ってみたが、確信したのは変わらぬ敵対的政策だった」と米国への不信感をあらわにし、軍備増強の必要性を強調した。 北朝鮮の対米強硬策の背景には後ろ盾のロシアの存在があるようだ。 6日にソウルで韓国の趙兌烈(チョ・テヨル)外相と会談したブリンケン米国務長官は会談後の共同記者会見で「プーチン露大統領が北朝鮮の核保有を容認する可能性が高まった」と述べ、ロシアは北朝鮮に先端宇宙技術や衛星技術を共有する意向だとする「信頼できる情報がある」と説明した。ウクライナとの戦闘で露西部クルスク州で昨年12月末、派兵された北朝鮮兵約千人が死傷したとも言及。露朝の「協力の深まりを示す事例だ」と指摘した。 趙氏は「韓米同盟にいかなる空白もないと再確認した」と述べたが、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が非常戒厳を受けて弾劾訴追され、前国防相が逮捕された政治的混乱が対北安保体制に与える影響は小さくないとみられる。