古代騎馬民族スキタイと関連──シベリアで見つかった2800年前の墳墓で生贄の人馬や馬具が出土
シベリア南部のロシア・トゥバ共和国で発見された約2800年前の墳墓から、生贄と見られる人骨や馬の骨が出土した。考古学研究者は、古代のユーラシア草原部で活動した騎馬遊牧民スキタイとこの墓との間に、密接な関係があると考えている。 トゥバ共和国のクルガン(大型墳墓)からは、女性の遺骨や真鍮のハミ(馬の口に含ませる馬具)を付けた18頭の馬の骨、そして乗馬用具や動物の意匠を施した工芸品が発掘された。10月8日付けで学術誌アンティクィティ(Antiquity)に掲載された論文によると、出土品は青銅器時代から鉄器時代へと移行した紀元前9世紀後半頃のもので、スキタイの埋葬習慣の最も古い例との類似を示している。 しかし、「シベリアの王家の谷」と呼ばれる場所にあるこのクルガンは、スキタイが活動していたとされる地域から何千キロも東にある。つまり、スキタイ文化の大規模な痕跡が、今回ほど東方で確認されたのは初めてのことだ。 スキタイ文化の起源については、いまだ不明な点が多い。文字による記録は残されていないが、彼らは馬を調教して活用し、独特の動物意匠を創造し、生贄の儀式を行っていたと考えられている。 こうしたスキタイの文化に触れ、それを書き残した人物には、紀元前5世紀のギリシャの歴史家ヘロドトスがいる。ヘロドトスによると、スキタイ王の葬儀には多数の馬や召使いが生贄として捧げられ、内臓を抜かれて剥製にされた馬や人間は、木の支柱に据え付けられて墳墓を囲むように配置されたという。 今回の発見はまた、遊牧民のスキタイと、その習慣の一部を取り入れたモンゴルにおける初期馬文化の確立とのつながりを示している。スイス・ベルン大学の考古学者で論文の上席著者であるジーノ・カスパリは、科学ニュースサイトのライブサイエンス(Live Science)にこう語った。 「他に類のない文化が残した最古の痕跡を発掘できたのは考古学者冥利につきます。そして、子どもの頃の夢が叶いました」(翻訳:石井佳子)
ARTnews JAPAN