「つみたてNISA」のために新設されたインデックスファンド、何が問題なの?
新設インデックスファンドが続々登場 その裏には?
業界各社はどのように反応しているのでしょうか。 商品提供する運用業界側は、大半の既存ファンドが「つみたてNISA」の適用外と締め出しを食らってしまったため、大手運用会社各社はこぞって新設登録が許されるインデックスファンドをラインナップしています。 しかしインデックスファンドは単純な汎用商品なので差別化を示しづらく、唯一の競争優位性をコスト水準に求め、熾烈なコスト引き下げ競争が始まりました。それは大手間のプライドを賭けた闘いとなり、コストゼロへ向けたビジネスとして成立し得ない水準への、言わば無間地獄を呈しており共倒れが懸念されるほどです。 赤字垂れ流しの低コスト商品は果たして顧客本位なのか、そこが問題です。健全な事業継続には相応の合理的な報酬が不可欠です。出血大サービス商品を維持させようとすれば、他の商品でそれを穴埋めする高コスト商品が必然とならざるを得ず、そもそもこれは顧客本位の態度とは到底言えそうにありません。
販売金融機関の状況は?
一方で販売金融機関側はどのような状況かというと、制度普及の社会的意義を存続への危機感の中で真面目に捉え、積極的に取り組む銀行が散見されますが、多くは金融庁の手前、“形式は整えて取り組みには消極的”というのが本音という面従腹背派です。一部には完全無視で大胆にも導入を見送っているところもあります。そして形式主義の大半は、アリバイ作りであるかのようにインデックスファンドをメニューにいくつか並べています。商品登録要件から大半がインデックスファンドになったことに鑑みて、金融庁は「つみたてNISA」では専らインデックスファンドの販売を求めている、との忖度が働いているようです。 おまけに低コストインデックスファンドはいくら頑張って販売したとしてもほとんど収益化ははかれないと、はなから収益事業化を諦めているのでしょうか。果たしてそれが金融庁の意向に合致したことなのかは甚だ疑問であり、それならば日本の資産運用業界はインデックスファンドを製造するだけの能力しか求められていないことになります。金融改革の一つの軸は資産運用の高度化にあり、それを実現するための行政方針が顧客本位の業務運営の実践と浸透だとすると、やはり長期資産形成に資する真っ当なアクティブファンドの育成にこそ改革の本意はあるはずです。 「つみたてNISA」においても、アクティブファンドの必要性に気が付いている金融機関は、顧客本位の業務運営への理解が進んでいると言えるかもしれません。いずれにせよ、各金融機関の「つみたてNISA」への対応如何が業界全体の淘汰再編の行方を大きく左右することになりそうです。これからじっくりと注目していきましょう。 (セゾン投信株式会社 代表取締役 中野晴啓) セゾン投信株式会社代表取締役社長。1963年生まれ。87年クレディセゾン入社。セゾングループ内で投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金の運用等を手がける。06年セゾン投信(株)を設立。公益財団法人セゾン文化財団理事。一般社団法人投資信託協会理事。全国各地で年間150回講演やセミナーを行っている。