紅葉の見頃は10月上旬から。山形県米沢市の秘湯の一軒宿に行ってみた
大平(おおだいら)温泉 滝見屋
山形県米沢市に点在する米沢八湯の一つに数えられる大平温泉 滝見屋は、雪解けの春から落葉する秋までの期間限定で営業する宿だ。日常から離れ、自然を五感で感じたい。そんな願いを叶えようと旅に出た。 米沢の市街地から車で45分ほど走る。途中からつづら折りの山道になるので運転は慎重に。道中、紅葉の時期には標高が高い所から色付き、自然がつくり出す絶妙なグラデーションが楽しめる。 【紅葉の写真】見頃は例年10月上旬~11月上旬 車で行けるのは標高1200メートル地点にある駐車場まで。そこから標高1050メートルの宿まで20分ほど歩いて下る。木々の間を歩くのは気持ちが良いけれど、思いのほか勾配があって日頃の運動不足を実感する。川の音が徐々に大きくなり、眼下に赤い屋根が見えてくるとあと少し。吊り橋を渡るといよいよ到着だ。 滝見屋は最上川の始まりとされる「火焔(かえん)の滝」が見える源流の宿。男女別の内湯のほか、川沿いに男女別の露天風呂や二つの貸切風呂がある。チェックインを済ませたら早速、露天風呂へ。川べりの地形を生かした野趣あふれる風呂につかると、歩き疲れた体がちょうど良い温度の無色透明の湯で柔らかく包まれ、思わずフワーッとため息が出る。
深い山の中、豪快に流れる川の音を聞きながら湯に浸っていると、大地とつながっているように感じる。湯上がりには肌がしっとりすべすべ。昔から胃腸の湯としても知られているそうだ。 温泉は全ての湯船で源泉かけ流し。自然の恵みによるだけに、温度など温泉を管理するには苦労が多いという。さらに自然は時に猛威を振るう。今年7月にも最上川流域で洪水が起こったことは記憶に新しい。 「今夏の豪雨の被害は免れましたが、一昨年、雪害や2度にわたる豪雨に見舞われ、建物が傾き、露天風呂に土砂が流れ込むなど大きな被害を受けました」と創業115年を迎える宿の5代目若女将の安部里美さん。「重機が入れないので、復旧には常連さんや地域の方々、行政など多くの力に助けられました。土砂をかき出し復旧工事を行って、ようやく営業再開にこぎつけたんです」