解散は五輪後? 任期中の改憲は難しい? 2020年日本政治展望
●東京都知事選
今年7月5日には都知事選が予定されている。注目されるのは、自民党が小池百合子知事を推薦するかどうかである。2016年の前回都知事選では、自民党は別の候補を推薦し、小池氏に敗れている。2017年の都議選でも、小池氏は「都民ファーストの会」を結成し大勝した。現在の都議会でも、小池知事は公明党とは良好な関係にあるが、自民党とはかなりの距離がある。 こうした経緯から、自民党東京都連は独自の候補を立てる構えを見せている。その一方で、二階俊博幹事長は小池氏を支持する姿勢を明らかにしている。都連と二階氏の調整がどのようになされるか、もし独自候補を立てることになった場合に有望な候補を見つけられるかが課題である。
●日本の民主主義の再建
以上の通り、さまざまな点で流動的な状況であるが、実のところ、今の日本政治が抱える最大の課題は、民主主義の基盤が崩れかかっているかもしれないということである。 独立系シンクタンクである言論NPOが昨年11月に発表した世論調査によれば、政治家を自分たちの代表だと思うかという質問に対し、「代表だと思わない」という回答が45%となり、「代表だと思う」(41.5%)という回答を上回った。また、政党や政治家に日本が直面する課題の解決を期待できないと考えている回答者は70.9%もいた。 この結果は、国民の代表である政治家・政党に対して不信が高まっている現実を示している。代表制民主主義の本質とは、代表たる政治家に主権者たる国民が権力を信託することにほかならないが、人々は信頼できない者には権力を預けようとはしないだろう。この意味で、政治家・政党への不信は民主主義の基盤を掘り崩す危険が高いのである。 過去に政治不信の大きな波が押し寄せたのは、リクルート事件が起こった1980年代末頃のことである。このときは、危機感を持った政治家や財界人、有識者などが積極的に動き出し、選挙制度改革を中心とする一連の政治改革が1990年代半ばに実現した。現行の小選挙区比例代表並立制が導入されたのはこのときである。政治改革の目的として掲げられたのは「政権交代可能な政治」や「政策本位・政党本位の選挙」といったものであった。これらの目標は相当程度達成されたと考えられるが、まだ残された課題も多い。 政治改革から4半世紀が経った今、再び政治不信の波が来ているのであれば、改革の効果をあらためて検証する必要があろう。その上で、新たな制度改革が求められているのであれば、具体的な改革の処方箋を議論していくべきである。制度改革だけでなく、有権者や政治家の意識を変えていくことも重要だろう。大事なのは、私たち有権者が政治を「他人ごと」と考えずに「自分たちのこと」として考えることである。 2020年の日本政治では、表層的なことに目を奪われずに、「民主主義の建て直し」という根本的な問題にいかに取り組んでいくが問われるだろう。
------------------------------------- ■内山融(うちやま・ゆう) 東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は日本政治・比較政治。著書に、『小泉政権』(中公新書)、『現代日本の国家と市場』(東京大学出版会)など