解散は五輪後? 任期中の改憲は難しい? 2020年日本政治展望
●衆院解散
現在の衆院議員の任期は2021年10月に満了する。任期満了直前の「追い込まれ解散」を避けることや(※2)、夏の東京オリンピック・パラリンピック後には景気が後退する懸念があることから、今年中に衆院が解散される可能性はかなりの程度ある。では、タイミングはいつだろうか。 少し前までは、年明け早々に通常国会冒頭で解散がなされるとの観測もあったが、「桜を見る会」問題や秋元司衆院議員が逮捕されたIR(統合型リゾート)疑惑などが生じたため、この時期の解散はなさそうである。 次のタイミングは、予算が成立した4月以降である。もし通常国会で憲法改正の議論が膠着したら、「国民の信を問う」として解散に踏み切る可能性もあろう。ただしIR疑惑など一連の問題がまだ収まっていない可能性もある。 したがって、現時点でもっとも可能性が高いのは、東京五輪・パラリンピックを成功させ、その流れで解散・総選挙に持ち込むシナリオではないか。一方で、後述する野党合流の進展度合いも解散のタイミングに影響する。もし野党合流が円滑に進み、候補者一本化にも成功しそうであれば、その機先を制するために早めの解散を行うことも考えられる。 もっとも、解散のタイミングは流動的な要因に左右されるので、確定的なことはいえない。2020年中の解散の機会を逃してしまい、2021年にずれ込む可能性も十分にあるだろう。 (※2)「追い込まれ解散」…2009年7月、麻生内閣は任期満了直前に解散を行ったが、大敗し民主党に政権を譲った。解散のタイミングを逸した「追い込まれ解散」と呼ばれている。
●ポスト安倍
ポスト安倍の後継者としては、石破茂元自民党幹事長、岸田文雄自民党政調会長、小泉進次郎環境相、河野太郎防衛相、菅義偉官房長官、加藤勝信厚生労働相、茂木敏充外相といった面々が候補として挙げられる。 昨年12月下旬に日本経済新聞が行った世論調査では、次の首相にふさわしいと思う人物について、1位は石破氏の20%、2位は小泉氏の17%、3位は安倍首相の15%であった。以下、河野氏が9%、立憲民主党の枝野幸男代表が6%、菅氏と岸田氏が5%、茂木氏、小渕優子元経済産業相、加藤氏がそれぞれ1%となっている。 やはり昨年12月下旬の朝日新聞の世論調査では、次の自民党総裁として誰がふさわしいかという質問に対して、石破氏とした回答者が23%で1位であった。以下順に、小泉氏20%、河野氏8%、菅氏6%、岸田氏5%、加藤氏1%であった(こちらの調査は選択肢に安倍首相が入っていない)。 安倍首相自身は、昨年末のテレビ番組収録で、ポスト安倍の候補について岸田文雄氏、茂木敏充氏、菅義偉氏、加藤勝信氏をこの順に挙げている。 世論調査から見れば、石破氏が多くの支持を集めているようである。「桜を見る会」問題に対して批判的な発言を行うなど、自らの立場を鮮明にしている姿勢が注目されているのであろう。小泉氏も人気が高い。小泉氏は父親譲りの分かりやすいフレーズで人々へアピールすることに長けているが、環境大臣として成果が出せないと失速する恐れもあろう。 岸田氏は安倍首相の意中の後継者であるようだし、宏池会出身の久々の首相としての期待が高いものの、世論の支持は残念ながら今一つである。安倍首相が言及したそのほかの人たちも、実務的な能力には定評があるようだが、国民的な支持を得られるかが課題である。 もし、安倍首相の意中の後継者が十分な世論の支持を得られないということになれば、安倍首相の総裁4選を求める声が高まるかもしれない。また、憲法改正が任期中に実現しない場合には、安倍首相自身が4選を目指す可能性も皆無ではない。