解散は五輪後? 任期中の改憲は難しい? 2020年日本政治展望
安倍晋三首相は2020年の年頭所感を発表し、憲法改正への意欲をあらためて示しました。オリンピック・イヤーである今年の日本政治について、政治学者で東京大学大学院教授の内山融氏に展望してもらいました。 【写真】最長安倍政権に見えた「強み」と「弱み」 2019年日本政治振り返り ◇ 2020年の日本政治では、憲法改正、衆院解散、ポスト安倍、野党合流などが焦点となっていくだろう。オリンピック・パラリンピック直前の7月に予定される都知事選の行方も見逃せない。これらについて展望した上で、日本政治が抱える大きな課題――民主主義の建て直し――にも触れたい。
●憲法改正
安倍首相は、総裁任期の来る2021年9月までに憲法改正の発議と国民投票を目指すと表明している。 まずは憲法改正の手続を簡単におさらいしておこう。憲法改正の発議は、国会の衆参両院それぞれの本会議で総議員 3分の2以上の賛成で可決されることが必要である。国民投票は、憲法改正の発議から60日以後180日以内に行われる。国民投票で投票総数の過半数が得られれば憲法改正が実施される。 安倍首相が任期内に国民投票を行うのであれば、遅くとも2021年前半の通常国会で改正の発議を行う必要がある。しかしこの日程だと国民投票まで余裕があまりないので、安倍首相としては、できれば2020年中に発議に目処を付けたいところではないか。 与党側は、昨年秋の臨時国会で、憲法改正の手続を定める国民投票法改正を成立させる見通しだった(※1)。しかし臨時国会では「桜を見る会」問題などで国会が紛糾したことから、同改正案の審議は見送られてしまった。憲法改正の前提として必要である同改正法成立の遅れは、与党の改憲スケジュールを乱すこととなった。 年明け1月に召集される通常国会では、与党はまず国民投票法改正を目指すであろう。通常国会では予算の審議が最優先されるため、憲法改正案の審議に使える時間は限られてくるだろう。7月には東京都知事選が予定されているため、会期延長も難しい。秋の臨時国会が次の機会となるが、改憲案審議に十分な時間が確保できるとは限らない。このような状況から、安倍首相の任期中の憲法改正は難しくなったとの見方も一部から出ている。 このため、場合によっては、憲法改正は次期政権に任せる可能性もあるかもしれない。また、安倍首相自身が改憲を目指す場合でも、9条ではなく他の項目で改正を行う可能性も高い。連立パートナーの公明党が9条改正には慎重であるし、昨年の参院選でいわゆる「改憲勢力」が3分の2を割ってしまったため、他にも改正案への賛同者を得る必要があるからである。 ただし、いずれにせよ、政権の求心力を保ち、レームダック化を避けるために、安倍首相は今後も憲法改正を主張し続けるであろう。 (※1)国民投票法改正…投票しやすい環境を整備するために、駅や商業施設といった利便性の高い場所に投票所を設置することなどが定められている。