【手軽で万能、箒の魅力】古から変わらない形状の、天然素材の箒。
現代人の生活ニーズを満たす箒の人気が再燃中。このベーシックで優れた道具のよさを改めて知って、賢く取り入れよう。
古から変わらない形状の、シンプルな掃除道具の奥深さ。
箒は、千年以上前から存在する。『古事記』に祭祀用として記載されているように、かつては単なる清掃用具という以上に、箒は神聖な役割を担っていた。 「一般大衆の生活に畳が普及した江戸時代以降、箒の需要は爆発的に増えたようです」 そう教えてくれたのは、『白木屋傳兵衛(しろきやでんべえ)』7代目当主の中村悟さん。同店は天保元年創業、今日まで変わらぬ技術で江戸箒をつくり続けてきた。 「もともと国内で使われていた棕櫚(シュロ)の箒に対して、うちの登録商標でもある江戸箒はホウキグサを編んだものです。名前のとおり、江戸で誕生しました。棕櫚は使い始めに樹脂の粉が出るので、畳で使えるようになるまで板の間で使い込む必要がある。でも、せっかちな江戸っ子は、すぐに畳で使える箒が欲しかったんでしょうね(笑)」 住宅からは畳が減り、また掃除機が登場したことによって、以前に比べて箒は影を潜めてしまったかのようにも見える。が、ここ数年、熱い注目を集めている。まず、コンパクトなので収納場所に困らず、思いついたときにさっと気軽に持ち出せる。その際も音が出ないため、近隣を気にせず、時間帯を問わずに掃除できる。電気を使わないから経済的だし、さらには排気もないので、空気が拡散されることでハウスダストを吸ってしまったり、舞い上がったホコリが下りてきて掃除したはずの箇所にゴミが落ちていたり、ということもない。「時間的にも、掃除機の半分くらいで済むんですよ」と、現代人の生活にとって、実はいいことずくめなのだ。 身長や姿勢に合わせて柄の長さを、掃除したい箇所に合わせて穂幅を選ぶなど、箒の選び方、また掃き方の工夫ひとつで効率性がぐんと上がる。だからストレスなく作業できて気分がよくなるという精神的な作用があるのも存外侮れない箒のマジック。千年の時を超えて今再び、私たちの生活のニーズに合致する箒を見直してみたい。