久住昌之が武蔵や政宗も入ったとされる<佐賀・武雄温泉>へ。「竜宮城」のごとくド派手な新館の設計者は誰もが知るあの駅も手掛けていて…
漫画・ドラマともに大人気の『孤独のグルメ』の原作者として知られ、日本中を飛び回る久住昌之さん。そんな久住さんがどっぷりハマり、足掛け6年以上通っているのが<佐賀県>です。そこで今回は、久住さんの著書『新・佐賀漫遊記』から、久住さん流・佐賀県の楽しみ方を一部抜粋してご紹介します。 【写真】「竜宮城!?」と思った武雄温泉入口前で写真を撮る久住さん * * * * * * * ◆初めての武雄温泉(2013年) 佐賀に初めて行ったのは、「旅の手帖」に連載していた「ニッポン線路つたい歩き」(カンゼンから同タイトルで単行本化)の取材で、佐世保線に伝い歩いた時のことだ。日本各地の鉄道沿いの道を半日歩くという連載だった。 その日は博多から特急みどりに乗って2時間弱、武雄温泉駅まで行き、温泉街の旅館に泊まり、翌朝から歩いた。 武雄温泉は全く知らなかったが、編集者に1300年の歴史があると聞いて軽く驚いた。奈良時代に始まった温泉なのか。イメージわかない。 江戸時代には、宮本武蔵、伊達政宗、伊能忠敬が入った記録があるというので、さらに驚いた。 こんなところで宮本武蔵の名前が出てくるとは。宮本武蔵は熊本で没したから、熊本へ向かう途中に立ち寄ったのだろうか?
◆佐賀県の全体像 さっそく地図を開くと、関門海峡から熊本に向かうのに、武雄温泉に寄るというのはずいぶん回り道だ。そんな遠回りしてまで、武蔵は温泉に行きたかったか? そもそも、武蔵は風呂嫌いで、長い髪も洗わないので、近寄ると臭かったとも言われる。本当に武雄温泉に入ったのだろうか? 大いに疑問が湧く。 と思いながら地図をながめていて、ふと自分はこの歳になるまで、佐賀県の地図をちゃんと見たことがないのに気がついた。いや、佐賀県民には申し訳ないが。 佐賀に通うようになっても、県内の地域の位置関係とか、方向感覚や距離感がなかなかつかめなかった。いや、今でもはっきりわかっていない。 小さな県なのに、すごく全体像が捉えにくい県なのだ。中心的な高い山や河川、大きな街をすべて結ぶ大動脈的な鉄道が無いからかもしれない。