久住昌之が武蔵や政宗も入ったとされる<佐賀・武雄温泉>へ。「竜宮城」のごとくド派手な新館の設計者は誰もが知るあの駅も手掛けていて…
◆今も残る“ならわし” 帰りに番台のところで、前にいたおばあちゃんが、番台の人に「ごちそうさま」と言って出ていった。 昔の銭湯は、入るときは「いただきます」出るときは「ごちそうさま」と言ったものだ、というのを、銭湯の歴史の本で読んだことがある。 なんとここでは、今もそのならわしが残っている。ふたたび、じーんときた。 表に出ると、停まった軽トラックからゴム長を履いたおじいちゃんが降りてきて、タオルを下げて風呂に向かっていった。農家の方だろうか。そんな使われ方もしている。 本当にいろいろ驚かされた、武雄温泉。 この体験は「佐賀って意外に面白い県かもしれない」と、ボクの無意識層に残り、今の佐賀通いに繋っているのかもしれない。 ※本稿は、『新・佐賀漫遊記』(産業編集センター)の一部を再編集したものです。
久住昌之