井岡一翔は日本人初の4階級制覇に成功するのか?名王者・内山高志の見解は
大晦日に日本人初の4階級制覇を狙うWBO世界スーパーフライ級3位の井岡一翔(29)が14日、新宿区四谷の「KODLAB」で公開スパーリングを行った。大晦日にマカオで同じく4階級制覇を狙う同級1位のドニー・ニエテス(36、フィリピン)とWBO世界スーパーフライ級王座決定戦を戦うが、「新たな歴史を刻む。できるのは僕しかいない」と公約した。41勝(23KO)1敗5分けのニエテスは、過去最強の相手だが、練習場所を提供しているジム経営者、元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者、内山高志氏(39)は「試合勘は戻っている。ポイントを奪って判定で勝てる」と太鼓判。2年ぶり7度目の大晦日決戦に挑む井岡に歴史的瞬間が近づいてきた。
打って打たさない理想のボクシング
殺気を漂わせていた。かつて叔父である元2階級王者、井岡弘樹氏ともコンビを組んでいたイスマエル・サラス専属トレーナーとの公開スパー。グローブをつけずに素手でのマスボクシングで、接近戦での体のポジションやタイミングを徹底的にチェックした。 「簡単な試合にはならない。ペースを早く取った方が有利に進められる。だが、ニエテスもスマートで頭がいい。序盤にペースをつかむのは難しい」 ニエテス戦の必勝パターンをそう語る井岡は、ペースをつかむための手段として「変化」「幅」という言葉を使った。 「リードパンチを使ってペースを崩すことが理想。でもそれだけではペースは握れない。バリエーションをつけて、いろんなコンビネーションやパターンをやっている。幅広く考えないと、“これだけ”を押し付けると幅が狭くなる。その意識を持って変化をつけたパンチが大事になってくる」 その変化の一つがインファイトでも制圧するパターンなのだろう。サラス専属トレーナーは3週間前に来日。すでに100ラウンドを超えるスパーを消化してきた。 電撃引退を発表したのが、昨年の大晦日だった。 だが、今年7月に再起を決意。所属ジムを日本に置かず、いきなり米国の「スーパーフライ3」というビッグイベントを再起の舞台に設定して、ローマン・ゴンザレス(ニカラグア)とフルラウンドを戦った経験のあるWBC世界スーパーフライ級シルバー王者のマックウィリアムズ・アローヨ(プエルトリコ)という強豪を判定で下し、4階級制覇への切符を手にした。そのボクシングは、かつての「打たさずに打つ」という井岡の美しいボクシングではなかった。 被弾のリスクを覚悟して、愚直に前へ前へと出る、これまでの井岡とは一変するようなファイティングスタイルだった。その分、顔も腫れたが、それが井岡の新たな評価につながり、今回の4階級制覇挑戦へとつながった。 「前回はブランクもあったし気持ちで戦った。特別な試合で、いろんなことが挑戦だった。結果にこだわった。試合後は顔も腫れた。パンチももらったが、結果に満足している」 階級を一つ上げ環境も変え再起を決めた井岡は原点に立ち返ったという。 「肉体改造をやってきたが、タイトルをとるためには難しい階級の壁がある。もう一度、一から体作りも含めてボクシングに向き合った。重点的に見つめ直した。階級(の壁への挑戦)も大事だが、勝つことが大前提。それを証明するために一からやり直した」 その経験を4階級制覇の舞台につなげたい。 「前回の経験を生かして、気持ちも大事だが、今回は頭を使って利口にスマートに試合を進めればディフェンスも改善される。そこをプラスアルファに、いいパフォーマンスを見せる。打って打たさないのが理想。課題を意識しないといけない」 井岡らしいスピードを生かした美しいボクシング。つまりスピードと距離を意識した出入りのスタイリッシュさを取り戻し勝利にこだわるというのだ。 では、日本人ボクサーにとって未知の領域にある4階級制覇は可能なのか。