「米朝」「米中」で世界が揺れた2018年 国際ニュースを振り返る
(4)中国全人代が国家首席の任期撤廃
3月11日、中国の全国人民代表大会は憲法改正案を採択し、「2期10年」までと定められていた国家主席の任期が撤廃されました。現在の習近平国家主席は2013年からその座にありますが、この決定で2023年以降も続投が可能になったのです。 国家主席は中国の国家元首にあたります。一般的に指導者の任期制は権力の独占を防ぐためのもので、中国では改革・開放を推し進めたトウ小平によって導入されました。これは絶対的な権力を握った毛沢東の没後、権力闘争が激化して中国が混乱したことへの反省からでした。 その任期制の撤廃は、これまで以上に習近平氏の権限を強めるものです。習氏は国家主席以外にも、共産党の責任者である総書記、軍の責任者である中央軍事委員会主席の地位にもありますが、これらの任期は明文化された上限はありません。国家、党、軍を握る習氏のもと、中国はさらに強権化するものとみられます。 ※「トウ」は登におおざと
(5)メルケル首相、次期党首選に立候補せず
10月28日、ドイツ各地の地方選挙で、メルケル首相が率いる与党・キリスト教民主同盟(CDU)は、連立を組む社会民主党とともに議席を大きく減らし、入れ替わりに反移民を主張する右派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)と、反原発と環境保護を旗印にする左派「緑の党」が躍進しました。この結果を受け、メルケル首相は「全面的な責任」を認め、2021年の首相の任期満了をもって退任し、その後はいかなる政治的ポストも求めないことを宣言しました。 2005年から首相の座にあるメルケル氏は、欧州連合(EU)の柱としてギリシャ債務危機などを乗り切る先頭に立ってきましたが、シリア難民の受け入れを進めたことに国内で不満が噴出。極右勢力の台頭を許しました。メルケル氏の退任宣言はドイツ連立政権の求心力の低下を象徴するとともに、今後EUがさらに分裂する予兆ともみえます。
(6)米軍のシリア撤退宣言
12月19日、トランプ大統領はシリアからの米軍撤退を発表。シリア内戦の中で台頭した過激派組織「イスラム国(IS)」を「撃破した」と説明しました。 ところが、この決定を受けて、マティス国防長官が来年2月28日をもって辞任することが明らかになっただけでなく、IS担当特使だったマクガーク大使も辞任を発表するなど、アメリカ政府内でも異論が噴出したため、23日にトランプ大統領は「撤退は急がず慎重に行う」と軌道修正を余儀なくされました。 トランプ氏の決定は、シリアでクルド人勢力を支援するアメリカと、国内のクルド人勢力の分離独立運動を取り締まってきたトルコの間の対立を和らげるためだったとみられます。その一方で、米軍撤退はシリアのアサド政権を支援するロシアやイランの影響力を拡大させるため、これらの主導によるシリア内戦の終結を秒読みに入らせるものともいえます。