「米朝」「米中」で世界が揺れた2018年 国際ニュースを振り返る
(9)カタールのOPEC離脱
12月4日、中東のカタールは2019年1月に石油輸出国機構(OPEC)から脱退すると発表。その背景には、OPECで強い影響力をもつ、世界屈指の産油国サウジアラビアとの関係悪化がありました。 サウジアラビアからみてカタールは自分の「足場」ですが、当のカタールはサウジが敵視するイランだけでなく、「ヒズボラ」や「ムスリム同胞団」などのイスラム団体との関係を維持してきました。その結果、両国の関係は悪化し、2017年6月にサウジはアラブ首長国連邦(UAE)やエジプトなどとともに、カタールと断交し、経済封鎖も実施してきました。 これに対して、カタールはイランやトルコとの関係を深めており、今回のOPEC離脱はサウジからの影響を受けないで資源開発を進める方針を打ち出すものでした。世界屈指の天然ガス輸出国カタールの「独立」は、世界のエネルギー市場がより流動化する兆候といえます。
(10)ブラジルでボルソナロ氏当選
10月28日、ブラジル大統領選挙でボルソナロ候補が当選。ボルソナロ氏は軍出身で、麻薬カルテルの容赦ない取り締まりを主張するほか、女性や黒人への差別的な発言で知られ、「ブラジルのトランプ」とも呼ばれます。実際、ボルソナロ氏はトランプ大統領を賞賛し、アメリカとの関係強化も主張しています。 アメリカの圧倒的な影響力に対する反動で、ラテンアメリカ諸国では2000年代に左派政権が相次いで誕生し、ブラジルでも2003年から2011年までその座にあったルーラ大統領のもと、国営企業を中心とするエネルギー産業の育成や雇用拡大などが進められました。 しかし、世界的な景気低迷と連動してブラジル経済も停滞し、さらに左派政権のもとで汚職が増加する中、右派への揺れ戻しが発生したのです。「ブラジルのトランプ」の誕生は、今後ラテンアメリカ諸国で右派政権が増えるきっかけになるともみられます。
------------------------------------------ ■六辻彰二(むつじ・しょうじ) 国際政治学者。博士(国際関係)。アフリカをメインフィールドに、幅広く国際政治を分析。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、東京女子大学などで教鞭をとる。著書に『世界の独裁者』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、『対立からわかる! 最新世界情勢』(成美堂出版)。その他、論文多数。Yahoo!ニュース個人オーサー