「米朝」「米中」で世界が揺れた2018年 国際ニュースを振り返る
(2)米中貿易戦争(米中間選挙)
トランプ大統領は3月23日、知的財産権の侵害や技術移転の強要などを理由に、中国製鉄鋼・アルミニウムの関税の輸入制限を発動。その後、追加措置を矢継ぎ早に実施し、これに中国もアメリカ製品への関税引き上げで応酬したため、「貿易戦争」が激化し、各国に影響が広がりました。 アメリカ企業の海外進出で雇用が失われたと主張するトランプ氏にとって、中国との貿易戦争は11月の中間選挙に向けて、「強いリーダー」を演出する材料でもありました。中間選挙後の12月1日、アルゼンチンでの習近平国家主席との会談でトランプ大統領は、年明けに予定していた対中追加関税の引き上げを凍結する一方、中国による知的財産権の保護強化などで協議を始め、90日間以内に結論を得ることで合意。貿易戦争が「一時休戦」になったことには、全面的な対立による経済的損失への警戒が働いたとみられます。 しかし、直後の6日、アメリカの要請を受けたカナダ当局は中国の情報機器大手ファーウェイの副会長兼CFOの孟晩舟氏を拘束。アメリカが制裁を敷くイランへの違法輸出が理由でしたが、その背景にはファーウェイ製品による情報漏洩疑惑もあります。また、このタイミングでの拘束には貿易交渉を有利にする手段という側面もあるとみられ、米中対立は長期化の様相を呈しています。
(3)サウジアラビア人ジャーナリスト殺害事件
サウジアラビア人ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏が10月2日、トルコにあるサウジアラビア領事館に入ったまま消息を絶ちました。この事件は、中東の大国サウジアラビアの立場を揺さぶるものになっています。 事件の舞台となったトルコは、サウジ政府の関与を追及。カショギ氏が身に着けていたスマートウォッチから領事館の外の婚約者に送られた音声データをトルコ政府が入手したとみられ、サウジ政府の説明が二転三転したことで、国際的に批判が高まりましたが、ここにはトルコとサウジのライバル関係もありました。 とりわけ、焦点となったのは、サウジアラビアを実質的に支配するムハンマド皇太子の関与でした。トルコが先導する国際的な世論に追い詰められたサウジ政府は、10月20日に初めてカショギ氏の死亡を認めましたが、「カショギ氏は領事館職員と殴り合いの末に死亡した」と説明。「事件の隠蔽」を理由に領事館職員など18人の逮捕と情報部幹部の解任を発表したものの、その後も一貫してムハンマド皇太子の関与を否定しています。 既に実権を握っているだけでなく、次期国王でもあるムハンマド皇太子の立場を守るため、今後もこの説明は変わらないとみられますが、この問題が長期化すればするほど、サウジアラビアのイスラム圏での求心力は低下するものとみられます。