ポーランド映画の現在地<1>…最注目作集まるグディニア映画祭、境界超える作品目立つ
映画を見ていると、それが作られた国の映画事情が知りたくなる。とりわけ、ポーランドについては、何がその活力と芸術性を支えているのか、とても興味があった。がつんと心に響く、鮮烈な作品が折に触れて飛び出してくるからだ。同国北部グディニアで毎年、最注目作を多数集めて行われている「ポーランド映画祭」に行き、ポーランド映画の「現在地」を取材してみると、公的支援のあり方や映画学校が果たす役割の重要性が改めて浮かび上がってきた。4回に分けて報告する。(編集委員 恩田泰子)
ちょっと前説
1950年代以降、ポーランドからは世界を刮目(かつもく)させる作品や映画人が世に出てきた。日本で最も広く知られてきたのがアンジェイ・ワイダ(1926~2016年)だろう。「灰とダイヤモンド」「大理石の男」など、変わりゆく社会・政治的状況を作品に映し出しながら映画表現の可能性を切り開いてきた巨匠だ。
ワイダ以外にも才能はたくさん。イエジー・カヴァレロヴィチ(「夜行列車」「尼僧ヨアンナ」)、ロマン・ポランスキー(「水の中のナイフ」「戦場のピアニスト」)、イエジー・スコリモフスキ(「早春」「EO イーオー」)、クシシュトフ・キェシロフスキ(「デカローグ」「トリコロール」三部作)、アグニエシュカ・ホランド(「ソハの地下水道」)、パヴェウ・パヴリコフスキ(「イーダ」「COLD WAR あの歌、2つの心」)など、きりがない。多くの才能が1948年創立のウッチ映画大学から世に送り出されてきた。
日本では、スコリモフスキ監修のもと2012年から続く「ポーランド映画祭」(2024年は11月22日から28日まで東京・YEBISU GARDEN CINEMAで開催)が、過去の名作に光を当てながら、新しい才能を紹介。映画ファンをひきつけてきた。また、ワイダに関しては、12月に東京・京橋の国立映画アーカイブで、「映画監督 アンジェイ・ワイダ」と銘打って、14作品の特集上映(12月10日~26日)とその足跡をたどる企画展(12月10日~2025年3月23日)を開催。ワイダ生誕100年を前に、改めて関心を高めそうだ。