ポーランド映画の現在地<1>…最注目作集まるグディニア映画祭、境界超える作品目立つ
最新作や主要映画祭出品作がが一堂に
グディニアの「ポーランド映画祭」の話に移ろう。
グディニアは、バルト海沿岸の港湾都市。南側のソポト、グダニスクとともに大都市圏を形成している。ビーチもあり、夏はリゾート客でにぎわうという。大都会ではないが、田舎でもない。たとえば、コーヒーを飲みたくなったら、スターバックスからおしゃれな一軒家カフェまで、選択肢がいくつもある。そんな街だ。
ポーランド映画祭は、1974年にグダニスクで始まり、グディニア開催になったのは87年から。主催は、ポーランド文化・国家遺産省、ポーリッシュ・フィルム・インスティテュート、ポーランド映画人協会、ポモージェ県、グディニア市長だ。
メインコンペティション部門で上映されるのは、最新、あるいは国内外の主要映画祭で発表された最注目作。つまり、その年の要チェック作品をいち早く概観できるわけだ。さらに二つのコンペ部門や子供向けの部門、過去の名作を上映する部門もある。
主会場は、グディニアにもともとあった劇場「ミュージカルシアター」と、広場をはさんでその向かい側に立つ「グディニアフィルムセンター」。後者は、2015年にオープン。複数のスクリーンやギャラリーを擁し、普段はアートハウス映画館(日本でいうミニシアター)として機能しているという。この二つの施設と、少し離れたショッピングモール内にあるシネマ・コンプレックス(貸自転車で10分足らず)も活用して、連日、朝から日付が変わる頃まで上映が行われる。
広場には、テーブルやベンチ、デッキチェアがそこかしこに置かれて、さまざまな人が思い思いに過ごしている。映画関係者もいれば、地元住民らしき人もいる。こういう場所があるのはいい。児童や生徒の一団も次々と映画を見にやってくる。映画祭による2023年の分析によれば、観客の半数は35歳以下だ。
がつんと来た「ザ・ガール・ウィズ・ザ・ニードル」
今年の会期は、9月23日から28日までの6日間だったが、自分はスケジュールの都合で、25日午後までしかいられない。上映作品はわんさとあり、メインコンペティション出品作だけでも16本。2日半の間に、取材をしながら、効率良く映画を見なくては……と計画をたてたのだが、なかなか思うようにことは運ばなかった。映画祭パスホルダー向けのオンライン予約競争に結構負けたからだ。