「手軽」なデジタルツインでインフラ設備点検をDX、CalTaに多分野が注目
JR東日本による保守点検作業のDX推進に貢献したデジタルツインプラットフォーム
■スマホで撮影した動画データも3D化する「TRANCITY」 独自のデジタルツインプラットフォーム「TRANCITY」は、スマートフォンやタブレットなど手近なデバイスが搭載するカメラでビデオを撮影して、インターネットブラウザ上で動くウェブアプリケーションから動画ファイルをアップするだけで、撮影した構造物や空間の3D・点群データを生成する。 撮影したオブジェクトは実寸大で、時系列情報も付与しながら3D空間(デジタルツイン)に記録されるため、「いつ・どこ」の情報なのかも後から参照できる。デジタルツインの中に配置した3Dオブジェクトから、元の2Dで記録された画像を呼び出して細部を比較するといったユニークで実用性の高い機能も備わる。 開発責任者でもあるCTOの高見澤氏はシンプルな操作性にもこだわった。TRANCITYを誰でも簡単に扱えるソフトにすることが、保守点検作業のDXと人材不足の解消に結びつくからだ。さらにTRANCITYはインターネットブラウザ上で動くため、スマホ、タブレット、パソコンなどどのようなデバイスでも閲覧できるという手軽さもある。 TRANCITYが「できること」は他社のデジタルツインソフトに比べて圧倒的に洗練されていると高見澤氏は胸を張る。 市場に存在するデジタルツインソフトはマクロな視点からデータを計測・管理するものが多く、記録できる単位も「都市全体」といったスケール感になってしまう。TRANCITYはユーザーが検査対象のモデルを、地理空間上に配置できる。高見澤氏はまた「高精度な3Dデータをモバイル端末からでも閲覧しやすいように特殊な圧縮配信技術を採用している」こともTRANCITYの特徴として挙げている。 ■JR東日本による保守点検作業のDX推進に貢献 2022年6月に提供を開始されたTRANCITYは、その後2年の間にインフラ設備管理のDXを担う企業や自治体などで次々に採用されている。JR東日本の東京建設プロジェクトマネジメントオフィスでは2024年4月以降、同所が施工する建設工事の写真や帳票に原則としてTRANCITYを使うルールを定めた。 従前は鉄道建設工事の検査報告書は紙資料として記録・保管されていた。そのために膨大な労力と手間が費やされ、紙資料の管理もまた煩雑になる。「DX推進と言いながら、実のところは紙資料をPDFにしてデジタル化するぐらいに留まっていた。人海戦術というアプローチを変えない限り本当のDXは実現できない。そのためにはまずルールを変えることが肝要だった」と井口氏はTRANCITYが認められてきた経緯を振り返る。