小惑星リュウグウに着地成功、探査ロボ「ミネルバ2」とは 初代の教訓糧に
小惑星リュウグウで探査を続けている小惑星探査機「はやぶさ2」。はやぶさ2には合計4機の小型ローバーと小型着陸機が搭載されていますが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は21日、午後1時35分(日本時間)にミネルバII-1(MINERVA-II-1)の2機のローバーの分離に成功したと発表しました。これら2機のローバーは初代の小惑星探査機「はやぶさ」に搭載されていたミネルバ(MINERVA)の後継機にあたります。これらのローバーはどのような機体で、どんな思いが込められたものなのでしょうか。(科学ライター・荒舩良孝) 【画像】はやぶさ2、ヤマ場の小惑星「着地」は困難なミッション
初代ミネルバの苦い思い出
小惑星探査機「はやぶさ2」には、小惑星リュウグウの探査をするために、可視カメラ、レーザー高度計、赤外分光計などの観測装置を備えています。これらの観測装置とは別に、上空からリュウグウに向けて投下するための小型ローバーと小型着陸機が載せられています。 初代の小惑星探査機「はやぶさ」にも、小型ローバーのミネルバ(MINERVA)が搭載されていました。ミネルバは、小惑星イトカワの表面に投下され、イトカワに着陸してさらに詳しい探査を行うことになっていたからです。 はやぶさは地上からの指示を受けて、イトカワの上空70メートルの地点からミネルバを分離、投下したはずでした。ところが、後で調べてみると、ミネルバ分離の指示がはやぶさに伝わったのは、イトカワの上空200メートルの地点で、秒速15メートルの速度で上昇中のときだったのです。予定よりも高い高度だったことと、イトカワから離れる方向に加速していたことから、ミネルバは宇宙に向けて飛び出してしまい、イトカワ着陸は果たせずに終わってしまったのです。ミネルバは、分離直後に、はやぶさの太陽電池パネルを撮影した画像を送ってきましたが、それ以降の通信は途絶えてしまいました。今も宇宙空間を漂っていることでしょう。
ミネルバの後継機たち
はやぶさ2に搭載されている小型機には、初代ミネルバの後継機にあたるミネルバII(MINERVA-II)が搭載されています。実は、ミネルバIIという名前は、2種類、3機のローバーの総称です。 1種類目のミネルバII-1(MINERVA-II-1)は、初代のはやぶさに搭載したミネルバを担当した宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所のチームで開発したもので、ローバー1Aとローバー1Bの2機が搭載されています。どちらのローバーも直径18センチ、高さ7センチの正十六面柱形をしていて、広角とステレオのカメラ、温度センサー、加速度計などが組みこまれています。2つのローバーは、センサーなどの情報をもとにリュウグウの表面で自律的に移動し、カメラで撮影したリュウグウ表面の画像をはやぶさ2経由で地球まで送ってきます。 2種類目のミネルバII-2(MINERVA-II-2)は、東北大学を中心とした大学コンソーシアムで開発したローバーです。直径15センチ、高さ16センチの機体には、板バネ、モーターなどを利用した4種類の移動機構を搭載し、1機で様々な移動方法を試せるようになっています。 はやぶさ2には、さらに、国際協力によって、ドイツ航空宇宙センター(DLR)とフランス国立宇宙研究センター(CNES)によって製作された小型着陸機マスコット(MASCOT)も搭載されています。マスコットは、広視野カメラ、赤外分光顕微鏡、熱放射計、磁力計の4つの観測機器を利用して、リュウグウの表面を探査します。