寿司×つまみ×バーのハイブリッドが新潮流
本日の「珍味盛り合わせ」は、北海道余市の「あん肝」、静岡の「鮎のパテ」、静岡の「生しらすのキムチ」、三陸の「燻製牡蠣のオイル漬け」の4種。さまざまな料理を作ってきた経験を生かした、工夫ある珍味にどうにも酒が進んでしまいます。
つまみの定番である「あん肝」は店ごとに味や食感が異なる、いわば“店の顔”。低温でゆっくりと火を入れた深坂さんの「あん肝」は、やわらかさ、コク、風味、すべて申し分のない仕上がりです。
オリーブオイルでじっくり焼いた鮎を丸ごとペースト状にした「鮎のパテ」は、捨てられてしまう中骨や尻尾ごと塩漬けにした鰯をニンニクと共にオイル漬けした自家製アンチョビが隠し味。信州味噌でコクをつけ、鮎らしい苦みが心地よい一品です。この後はいよいよ握りが始まります。珍味はお代わりができるので箸休めに傍に置いておけるのもいい!
自分の握りは自分で切り開く!
ハイレベルなつまみに酒もいい感じで進んだころ、握りが始まります。酢飯の米は山形の「つや姫」、酢は赤酢、米酢、黒酢をブレンドしています。黒酢を入れるのはコクを足して酸味をまろやかにするため。大釜から御櫃に少量移し、タネによって温度を変えています。
「毎日とんでもない量のコハダを仕込んでいたので思い入れがあるんです。思い出の魚ですね」と、深坂さん。コハダは仕込みが一番手のかかる寿司ダネで、酢の塩梅、身の締まり方、香り、味わいは十人十色、まさに寿司職人の腕の見せどころです。酢飯も温かく江戸前らしい、酢をしっかりと感じるコハダです。
サクラマスは塩麹漬けにして4日ほど寝かせ、ねっとりとした食感。少し冷ました酢飯は酢加減がマイルドになり、サクラマスに寄り添います。塩麹漬けは深坂さんのシグネチャーディッシュ。食材を変えて通年提供しています。
中にすき身を忍ばせたカマトロは見てのとおりのとろっとろの食感。本日の宮城県塩釜の釣りで161kgの鮪は豊洲の仲卸「まぐろは大善」から。「基本的に一番香りがいいと思う150~200kgの鮪を仕入れています」と言うように、頬張るとその香りの高さに目を見張ります。