建設用電線大手メーカーの今年度下期販売、堅調な昨年度水準確保へ。都市再開発など大型案件期待
建設用電線大手メーカーでは今年度下期の販売数量について「堅調だった昨年度下期と同水準を確保したい」(大手幹部)とする企業が多い。今下期は都市再開発や半導体工場建設など大型案件が需要を支えると見る。ただ足元は電材店向けの市販市場が軟調との声も。また建築現場の人手不足や物流・建築業での残業規制強化も懸念材料。目先には不確定要素も少なくない。需給面では深刻なひっ迫の兆しは現段階で見られない。ただ一部品種でタイト感はあり予断を許さない状況。需要期に入り警戒感を強める企業もある。 建設用電線は建物の電気配線などに用いられる材料。IV・CV・CVVの主要三品種などで構成されており、国内銅電線市場の約半分を占める電線・ケーブル業界の「主力製品」となっている。 ある大手メーカーでは今年度下期について「ニーズをけん引する幅広い建設案件がある」(幹部社員)と見通す。業界では都市再開発や大規模な半導体工場の立ち上げに加えてITサービスを支えるデータセンターの建設や、高速道路のインターチェンジ近隣などで進む物流倉庫の開設などでも需要を見込んでいる。さらに空港や大学などに関する建設案件や、来年開催予定の大阪・関西万博に関連する荷動きを期待する企業もある。 一方足元は中小マンションや戸建て住宅などにつながる電材店向けの市販市場が軟調とする大手メーカーも。ただ「市販の動きは戻りつつある」(関係筋)との声も市中からは聞かれる状況。 また建設現場の人手不足に伴う建物の工期延伸も需要面での懸念材料。ある大手電線メーカー幹部はその影響で「電線・ケーブルの納入時期が予定から先送りされている」と明かす。2~3カ月程度納入が延期されるケースもあり、業界では今後遅れがさらに大きくなるのではとの見解も。 加えて建設・物流業界で残業規制を強化する24年問題も市場環境の変動要因になり得る。市中では「規定の残業時間を使い切るなどして下期に影響が顕在化する可能性はある」との指摘も。さまざまな要因が需要にどう影響するのか注視される状況だ。 一方で需給については足元は落ち着いている。昨年度下期は深刻な需給ひっ迫に伴い新規受注を停止する大手メーカーが相次いだが、今下期は市場が急過熱する具体的な兆しは現在のところ見られない。大部分を占める低圧ケーブルの需給は正常だ。 ただ高圧ケーブルではタイト感があるほか、工期延伸で遅れていた需要が一気に立ち上がるなどした際は需給が引き締まる可能性はあり、決して予断を許さない状況。その中で需要期に入り「そう簡単にガードを下げることはできない」(大手メーカー幹部)と警戒感を強める企業も。仮に需給が引き締まっても顧客への供給を途切れさせないため、在庫を積み増している大手メーカーもある。