公立小学校の記録映画が海外で大反響 日本人を作る「特別活動」に世界が注目 近ごろ都に流行るもの
日本のありふれた公立小の1年を追ったドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」が海外で大反響を呼び、日本での凱旋(がいせん)公開が始まる。日本人にとって当たり前の給食や掃除の当番といった特別活動「TOKKATSU(特活)」に着目した作品で、時間への正確さやゴミ拾いなどに象徴される日本人の個よりも集団を重んじ、協調性を育む教育の原点を学ぼうという機運が海外で盛り上がっているのだ。高校野球に密着した話題作「甲子園:フィールド・オブ・ドリームス」に続く、山崎エマ監督(35)の第2弾。日本人とは何かを問う視点は冷静であり、やさしい。 【場面カット】映画「小学校~それは小さな社会~」 ■12月13日から凱旋公開 「自分たちで使う教室を、自分たちできれいにしていきます」。女性教諭の呼びかけに新1年生が、幼い動作で片付けを始める。 そんな映画が世界に驚きを与えた。昨年完成。20館で上映し首都では4カ月間ロングラン公開されたフィンランドをはじめ欧米やアジアで公開・放送・配信され、12カ国の映画祭に入選。今年11月から短縮版が、ニューヨーク・タイムズの動画サイトでも配信されている。山崎監督は日本人母と英国人父のもと神戸市で生まれ、大阪府内の公立小に6年間通った。ニューヨーク大で映画制作を学ぶため19歳で渡米した。 海外生活できちょうめんさや協調性をほめられることがあり「平均的な日本人だと思う」と返していたが、この強みの原点は小学校にあったと気付く。「私自身、日本人なのか? と問われて悩んだときもある。日本人って何だろう。映像を記録しながら探りたい」 ◇ 撮影を許可してくれる小学校を粘り強く探し、東京都世田谷区立塚戸小での受け入れが決まった。だが、準備中に新型コロナウイルス禍が発生する非常事態となる。「このまま進めていいのか迷ったが、コロナ対応で各国の特徴が際立ったこともあり、結果的に規律を守るなど日本的な部分が、より強調されたと思う」 令和3年度4月の入学式から3月の卒業式までの1年間に密着。桜や沿線電車の情景も取り入れながら1年生と6年生に焦点を当てた。撮影は150日700時間に及び、作品には子供たちの笑いや戸惑い、真剣さ、熱血教諭の泣き顔も赤裸々に映し出されている。