【海外トピックス】トランプ返り咲き後の世界はどうなる。EVは大失速するのだろうか?
次期トランプ政権の4年は自動車メーカーには天恵?
市場を見る限り、EV購入者はまだアーリーアドプターの域に止まっています。アーリーマジョリティーが選択するようになるには、購入価格がエンジン車と同等になり、充電インフラが整い、燃料代やメンテナンスコストはむしろ安いという経済性がしっかり認知されることが必要です。 テスラは25,000ドルの廉価EVの導入を放棄したと最近報じられていますが、VWやルノー、ステランティスなどはこの価格帯のEVを1~2年以内に出してきます。米国でも高価な大型ピックアップEVで市場を切り開こうとしたフォードは、25,000ドルのEVを開発中で、GMもコンパクトSUVのイクイノックスEVを34,995ドルで発売しました。 今後4年のトランプ政権でEV化のスピードが抑制され、2030年の米国のEVシェアが25~40%程度に留まることも想像されますが、将来のモビリティの主体はEVに移行するというヴィジョンはほとんどの自動車メーカーが共有しています。 世界最大市場の中国のEVやPHEVへのシフトのスピードは凄まじく、EV電池トップのCATLが開発した10分で400キロ分充電でき航続距離1,000キロ以上の麒麟電池や神行電池が既に量産車に採用されています。気候変動対策を重視する欧州の脱炭素化が中断するとは思えず、今後も現実に照らしつつ進んでいくでしょう。エレクトリックモビリティへの到達を少し急ぎすぎた反省を持って、一層の技術革新に励み、EVの社会受容に取り組んでいくとすれば、トランプ政権の復活は自動車産業に時間を与え、EV化ロードマップを堂々と軌道修正するエクスキューズになるかもしれません。(了) ●著者プロフィール 丸田 靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在をへて、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意-混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年 ヴイツーソリューション)がある。