【海外トピックス】トランプ返り咲き後の世界はどうなる。EVは大失速するのだろうか?
果たして一律10%の関税はあるのか?
経済的には、トランプ氏がかねてから発言している輸入品への関税アップやEVなどのグリーン政策の行方が焦点になりそうです。対中国の関税は、既にバイデン政権が中国製EVの関税を100%に引き上げ、半導体部品や太陽光パネルに50%、リチウムイオン電池や永久磁石にも25%の高関税を課しました。コロナ禍で必需品だった注射針やマスクなどの医療器具の関税も25~100%に大幅に引き上げており、電気製品や日用品以外に新たに高関税を課せる品目は多くはなさそうです。しかも、中国からの輸入は近年減少し続けており、2023年には米国の輸入先第1位は中国からメキシコに入れ替わりました。 トランプ氏は、メキシコからの輸入品にも高関税をかけるとしていますが、果たしてそれが現実的なのかは議論があります。メキシコは年間350万台の自動車を生産してその約9割は輸出されており、内77%(230万台)は米国向けです。1990年代にNAFTA(北米自由貿易協定)が締結されて以来、GMやステランティス、フォードなどデトロイト3はメキシコでSUVやピックアップトラックを生産し米国に輸出し、その割合は米国販売台数の15%に達しています。 またトヨタ、日産、ホンダは年間20万台前後、マツダもCX-30など10万台程度のメキシコ生産車を米国で販売しています。第1次トランプ政権の2017年にUSMCA協定に形を変えましたが、30年存在している北米の非課税ルールを変更するのは容易ではありません。10%以上の関税をかければサプライチエーンが混乱する自動車業界の反発は必至で、非関税の基準(現地調達率等)を厳格化するなどしてこれ以上メキシコに製造業が流出することを抑えようとするかもしれません。また、日本からも2023年に170万台の完成車が米国に輸出されており、これへの増税を回避するには、前回の2019年交渉時のように米国産農産物の関税を下げるなどの見返りを要求されることはありそうです。