【海外トピックス】トランプ返り咲き後の世界はどうなる。EVは大失速するのだろうか?
加州のゼロエミッション(ZEV)法は廃止?
規制でもう一つ焦点になるのは、カリフォルニア州のZEV規制です。深刻な大気汚染に苦しんだ加州のZEV法は、2005年から販売規模に応じて順次自動車メーカーに一定数のゼロエミッション車の販売を義務付け、これに対応できないメーカーはテスラなどからクレジットを買うなどしてきました。2025年(2026モデルイヤー)からは新たなフェーズに入り、35%のZEV※の販売が必要になります。北米トヨタCOOのジャック・ホリス氏は、トランプ再選後のメディア会見で、「国中どこを見回しても、消費者がそれほどの量のEVを欲している場所はない」と法律と現実の乖離を指摘しています。※一定のEV走行距離を満たすPHEVも20%までカウント可。 ZEV規制は東部のブルーステートを含め計17州で採用されており、ステランティスなどはこれに対応するためにエンジン車の供給を絞るなどしてきた経緯があります。加州に連邦政府とは異なる排ガス規制を許している事を前トランプ政権は問題視しこの特権を剥奪しましたが、バイデン政権下のEPAで再び容認されました。第2次トランプ政権で再び剥奪され、万一ZEV規制がなくなれば、2つの基準の存在を従来から問題としてきた自動車メーカーにとっても大きな戦略変更を意味するでしょう。しかし、これも法廷闘争に持ち込まれて時間がかかるのは必至で、4年後にまた民主党政権になれば再び覆されそうです。 最後に、トランプ氏の再選は2035年にエンジン車の販売を禁止したEUにも影響を及ぼしそうです。欧州のEV販売の減速は顕著であり、欧州自動車工業会(ACEA)は2026年からのCO2排出基準の厳格化を延期するよう要請しており、ハンガリーやポーランドに加えてイタリアもメローニ首相が2035年エンジン車禁止の見直しを求めました。EV転換へのリーダーであったはずのドイツはEV購入補助金を再開できず、VWやメルセデスも工場閉鎖やEV戦略の見直しに直面しています。