「修繕積立金を値上げしないと、マンションは廃墟化する」…!不安を煽られ不必要な工事で業者の“養分”にされる、哀れな住民【マンション管理クライシス】
TVが視聴率目当てに“廃墟”を「演出」する方法
前出・須藤氏が言う。 「どんな建物でもいいですが、全体的に見れば、一見、問題がなさそうでも、よく観察すると、部分的にタイルが欠けていたり、コンクリートにひび割れが入っていたりする箇所はあるものです。しかしその部分を3~4つ切り取って、並べられた拡大写真をみると、途端に物件全体が朽ち果てた印象になる。そして『このままだと廃墟化してしまいますよ。早く工事をやりましょう』というように修繕事業者は営業をするのです。 TV番組でも建物に数箇所くらいしかない目立った亀裂や破損の部分を編集で切り出して、あたかも建物全体が朽ちた印象を演出して、『修繕積立金の値上げが必要だ』と、大袈裟に報道しています。しかし、こうした特集をよく見ると、番組内で同じ箇所を何回も使いまわしている。おそらく取材を受けた物件も、そこまで深刻な状態ではないと思います」
コンクリート「ひび割れ」も数万円で補修可能
須藤氏が続ける。 「そもそも、マンションの外壁やコンクリート部分の破損や損壊は余程ではない限り、実際には見かけのインパクトほど補修費用はかかりません。1メートルに満たない亀裂が数ヵ所程度なら、1日作業で数万円程度で補修できます。これを見て、他も危ないから高額な大規模修繕が必要だというのは、全くのナンセンスなのです。必要な箇所を落ち着いて修繕すればいいだけなのです。 お金が足りないと説明されれば、まずは計画が過剰ではないか、費用は適正なのかをセカンドオピニオンなどを利用して疑うべきです。そしてどうしてもお金が足りなければ、数年程度、工期を後ろにずらせばいい。平均的なマンションであれば、その期間に2000万~3000万円は新たに貯まります。それからでも遅くはないのです」
工事をしない心配をする管理会社
また、必要性の低いオーバースペックな工事までも「適切な修繕」として提案されてしまっているなら、問題だ。理事会も専門家でないので、仮に無駄な工事でも、情報格差から、修繕事業者の営利色の強い提案であっても、それを明確に無駄と断定するための判断材料がない。結果、不要な工事が増え、管理組合の会計を悪化させてしまう。 「管理会社は、よく『工事提案をせず、万一のことがあったら責任問題になるから』というのですが、工事を重ねることによる金銭面への負担は問題視しません。維持費上昇によるリセール時の悪影響を説明をしない場合も多い。値上げ分の一部が工事会社を経由して、管理会社へキックバックされる商習慣もあり、正直、悪質と言えます。 そもそも、マンションにおいては、エレベーターや防火設備など重要項目は法定検査がある。それ以外の工事では、工事を実施しないことによって起こる問題で、多額の原状回復費がかかる可能性があるトラブルはほぼありません」(前出の住宅ジャーナリスト) 原状回復までの一時の不都合を耐えるか、ノーリスク志向で、リセールバリューへの悪影響を我慢して、高額な維持費を払い、修繕サイクルの短い大規模修繕による住民負担と金銭負担を受け入れるか、どちらが良いかは冷静に判断されるべきだろう。
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