【能登半島地震から1年】能登・輪島市のシェフ池端隼也さん「よりよい輪島をつくりたい」発信する輪島の明るい未来
「芽吹」が発信し育てる輪島の明るい未来
みんなの自立が叶ったら、「芽吹」はどうなるのだろうか。 そんな質問に池端さんは「なくなるかもしれませんし、自然に形を変えて、別の形で残るかもしれませんね。メンバー全員が『芽吹』を卒業できたら、それは立ち上げた当初の思いが実現できたということです」。 池端さんは、ほかにもイベントなどで全国を飛び回り、輪島の現状を伝えたりもしている。 「先日、東京のフランス料理レストラン『エスキス』のリオネル・ベカシェフや七尾の『ヴィラ・デラ・パーチェ』の平田明珠シェフたちとイベントをしたんですね。久しぶりにフランス料理に向き合って、やっぱり好きだな、こうした料理をやりたいな、と素直に思いました。『ラトリエ・ドゥ・ノト』の再開にはまだまだ時間がかかると思います。被害を受けてしまった周りの生産者さんたちとともに、再開まで一歩ずつ前に進んでいけたらと思います」
最初の取材のとき、池端さんは一枚の写真を私に送ってくれた。それは焼け野原になった朝市で、がれきの中に焼け残った泰山木(たいざんぼく)がスックと立っているものだった。いま、同じ場所に行くとがれきはすっかり片付けられていた。延々とどこまでも続くように感じる荒地ではユンボが淡々と整地をしていた。その荒涼とした大地には、あの泰山木も力強く立っていた。 「芽吹」という店名は、この焼け残った泰山木が春になったときに芽吹いたことに由来する。 「能登の自然は、ずっと変わらず生きている。この能登で私たちも生きていきたい。街の飲食店が一度こうして集まって話ができたのはよかったと思っています。ここから元に戻るのではなくて、よりよい未来を作っていく。そうしていかないといけないと思います」 輪島は少しずつだが、確かに前に向かって進んでいる。 【芽吹】 石川県輪島市マリンタウン6-1 営業時間/11時30分~13時30分、18時~21時30分(ともにL.O.) 定休日/日曜 取材・文・写真提供=山路美佐 編集=内田理惠(婦人画報編集部)