「誰もが他人を傷つけずに自分らしくあるべき」――イタリア発Z世代ロックバンド「マネスキン」が打ち破るタブー #なぜ話題
イタリア出身のロックバンド「マネスキン」を知っているだろうか。メンバー4人の平均年齢は23歳。非英語圏からブレークを果たし、いま世界的に人気を集めている。来日公演も盛況で、「サマー・ソニック2024」ではヘッドライナーを務めることが決定。ジェンダーにとらわれない自由なファッションでステージに立ち、メンバーのうち2人は性的マイノリティーであることを表明している。発信の背景にある考え、SNSとの向き合い方など、存分に語った。(取材・文:内田正樹/撮影:柏田テツヲ/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部) ※ベーシストのヴィクトリアは取材当日、体調不良のために不在で、後日改めて話を聞いた。
非英語圏のアーティストも、SNSの登場で発見されやすくなった
「周囲からよく『日本のお客さんは大人しい』と聞かされていたけど大間違いだよ。『ここ、南米か?』と思うぐらい盛り上がった。しかもみんな英語だけじゃなくイタリア語の歌も一緒に歌ってくれるなんてあり得ないと思った。満点だったね」 ボーカルのダミアーノは日本でのライブを熱っぽく振り返る。昨年12月、東京と神戸で行われたマネスキンの来日公演は観客8000人から1万5000人収容の会場で計4回。うち1回はチケット発売早々の完売を受けての追加公演だった。 東京会場を訪れた観客は10代から60代まで幅広く、親子連れの姿も。会場でファンの声を聞いた。「発言にすごく共感する」(18歳女性)。「20代の頃に聴いていたロックバンドのような魅力を感じる」(50代夫婦)。
ダミアーノ(ボーカル)、トーマス(ギター)、ヴィクトリア(ベース)、イーサン(ドラム)の4人は全員がイタリア・ローマの出身。平均年齢は23歳のZ世代だ。 10代の頃から地元の路上で演奏を重ね、かつてABBAを輩出した欧州最大の音楽コンテスト「ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト」2021年大会での優勝を機にブレーク。最新アルバム「ラッシュ!」は世界15カ国の音楽チャートで1位を獲得し、楽曲総再生回数は96億回(2023年12月時点)を超えた。オペラやカンツォーネのイメージが強いイタリアからロックバンドが現れ、世界的な支持を獲得したのは異例だ。 ヴィクトリア:ロックバンドのコンテスト入賞もイタリア国外で成功することも「絶対に不可能」と言われていた。しかも配信チャートにはロックの曲なんてほとんど入っていなかったから、「音楽性を変えろ」とまで言われた。 しかし、彼らは信念を曲げなかった。躍動感あふれるうねりのあるビートとキャッチーなメロディーを備えたハードなロックを引っ提げて、ヒップホップやダンサブルなポップスが主流の音楽シーンに躍り出たのだ。