AIの指示に従う時代がくるのか? いま「人間に求められるリーダーシップ」
ChatGPTなどの生成AI、私たちの生活や働き方に大きな影響を与え始めています。しかし、AIが生成した情報に対して、私たちはどこまで信頼を寄せることができるのでしょうか? この問いを起点に、これからのリーダーに必要な能力について書籍『AIが答えを出せない 問いの設定力』より紹介します。 部下の信頼を勝ち取る「声かけ」の極意 ※本稿は、鳥潟幸志著『AIが答えを出せない 問いの設定力』(クロスメディア・パブリッシング)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
人はAIに従いたいか?
ChatGPTが日本でリリースされ教育領域にも大きな影響が予測される中で、私(鳥潟)含むグロービス経営大学院の有志の教員が集まって、生成AIに関する読書会を開催しました。課題図書は『Im promptu:Amplifying OurHumanity Through AI』という書籍で、著者は、リード・ホフマンというChatGPTを開発したOpenAIの共同創業者のひとりです。 この書籍がユニークなのは、書籍の半分以上がChatGPT4と対話しながら書かれていて、書籍内の主張の多くがChatGTPにより生み出されているということです。7~8名の教員仲間と様々な議論を重ねる中で、とある教員が興味深い問いを投げかけてくれました。それは、「大半の主張が生成AIによって生み出されているのに、私たちがこの内容を信頼しているのはなぜか?」というものでした。 読書会を実施した当時でも、既に多くのコンテンツが生成AIにより生み出され、その内容が電子書籍として販売されていました。私も数冊Kindleで購入して読んだことがありましたが、そのほとんどが残念な品質だったことを覚えています(もちろん、作品によっては品質の高いものも存在すると思いますが、私が手に取ったコンテンツはいずれも高品質とは言えないものばかりでした)。 先ほどの教員仲間の問いをきっかけに議論を重ねた結果、「リード・ホフマンという著者が、本書にお墨付きを与えていること。そして、生成AIの内容に著者の考察が追加されていること」に価値を感じているのではないか、という結論に至りました。 私はこの読書会での議論をきっかけに、「AIが生み出す内容に人は従いたいと思うのか?」という大きな問いを持つようになりました。それから、実際に日々の実務で生成AIを活用したり、周囲の仲間と議論を重ねる中で私なりの考えが整理されました。それは以下の通りです。 「予測や計算可能な内容についてはAIの方が得意であり、その結論に人は疑いなく従うのではないか」 従った方が、効率的でありコスト削減が可能だからです。逆に言えば、これらの領域は今後もAIに置き換わり、人が方針を出す機会も減っていくと予想されます。 「一方で、予測不可能でリスクを伴う方針については、AIがロジカルに導き出す選択肢よりも、信頼のおける人が出す方針に従いたいと思うのではないか」 なぜなら、リスクがある方針はその後の実践が重要であり、信頼のおける人が出した方針であれば、仮にそれが違っていたとしても、方針を出した人が責任を持って最後までやり遂げる期待を持てるからです。 このことは、私自身も日々の仕事の中で実感しています。現場スタッフが強い問題意識と想いを持って小さなプロジェクトを立ち上げて、それを周囲が応援する。そして気が付くと、組織全体を巻き込む大きな動きに繋がっていることが多々あります。 年齢も若く、役職や権限もないスタッフになぜこのような動きが可能なのかと言えば、その人の持つ想いやコミットメント、責任感のようなものが他者に伝播して協力を引き出しているからではないでしょうか。そして、そのような小さなリーダーシップが、企業だけではなく社会全体で、ボランティア、市民活動、NPOなど様々な形式で生み出されていると感じています。 また、私もこれまでの社会人経験の中で、所属した組織のリーダーが発した方針にワクワクした経験があります。頭でロジカルに考えるとその方針が成功するかは不明でしたが、なぜかそのリーダーが発した言葉には重みがあり、実現させたいとコミットしたくなりました。