「折紙工学、メタマテリアルで製造業を変える」 Nature Architects の須藤海CEO
■航空・宇宙や自動車産業…未来に秘めた可能性
――今に至るまで会社はどういった軌跡をたどってきましたか 「最初の頃は、メタマテリアルの技術をどんな分野に実装できるか探索していた時期で、家具や建築、アパレルや家電の領域などで少しずつシーズとニーズをマッチングさせていきました。そうする中で当社の技術は徐々に航空・宇宙産業や(自動車レースの)F1といった分野でも注目されるようになっていきました。大きな転機になったのは、2023年の『人とくるまのテクノロジー展NAGOYA』(主催は公益社団法人自動車技術会)で技術的な展示をしたことですね。自動車メーカーの方々に『ものすごく面白い技術があるぞ』と認知され、たくさんのオファーをいただきました。あそこから当社のビジネスは一気に広がっていった感じです」 ――自動車にメタマテリアルを実装すると、具体的にどのようなメリットが考えられますか。 「今の自動車は、事故が起きた場合、乗員を守るために、自動車自らがつぶれてエネルギーを吸収する構造になっています。メタマテリアルを使えば、つぶれていくときの変形の具合を自由自在に制御できるため、今までとは異なるアプローチで衝突安全性能を高めることができる。そのことで自動車が軽くなったり、製造コストが安くなったりもするでしょう。メタマテリアルの考え方で設計し直すことによって、自動車の骨格構造自体も今後ガラリと変わる可能性を秘めていると考えています」 ――須藤さんは学生時代、陸上の三段跳びに打ち込むアスリートでもあったとお聞きしています。いま会社はホップ、ステップ、ジャンプのどの段階だとお考えですか。 「ステップですね。じつは三段跳びではステップが一番大事で、ここがうまくいかないと最後のジャンプが伸びない。しっかり成果を出し、日本のあらゆるモノ作りをアップデートする会社へと大きく飛躍したいと考えています」
■須藤海さんのスーツ「私流」
スタートアップの経営者は、プレゼンや商談の場面でもセットアップにTシャツのようなスタイルで臨むイメージがあるが、須藤さんはクライアントの前に出るときは必ずきちんとスーツを着用し、ネクタイを締めるという。 「お相手が大企業の重役の方だったりしますので、やはりリスペクトを表現すべきだと考えています。どなたにお会いするかわかりませんので、海外に出張するときも必ずスーツケースの中にスーツを1着しまっています」 今回着ているスリーピーススーツは、麻布テーラーでオーダーしたもの。ライトグレーの生地は、イタリアの名門ロロ・ピアーナに麻布テーラーが別注したもので、しなやかでありながらハリコシにも富む。 「程よい光沢はもちろん、タッチが気に入りました。ちなみに人はモノの表面を指先でスーッと触っただけで、そのモノの素材感を判読することができますが、それは表面の微妙な凹凸をなぞったときに起きる微小な振動を感じ取っているんですよ。この生地はとてもしっとり滑らかなタッチで、どういう組成でできているのか気になります」 ラペルはやや幅広でゴージラインは低め、パンツはベルトレスタイプで2プリーツ入りと、ややクラシックな趣が強いデザインを選んだ。須藤さんの落ち着いた雰囲気と良くマッチしている。 「過去オーダーでスーツを1回だけ仕立てたことがあるのですが、やっぱりいいものですね。とくに今回はフィッターの方がボクの体形の細かいところまで採寸してくれたおかげで、しっかり体にフィットしていて、着心地がとてもいい。これからはもっと積極的にオーダースーツにチャレンジしてみようかなと思います」