「折紙工学、メタマテリアルで製造業を変える」 Nature Architects の須藤海CEO
■原点は折り紙、形を変えて特性を生み出す
――そもそも須藤さんはどうして「カタチのチカラ」という発想に至ったのでしょうか。 「もともと子供の頃から折り紙が好きで、折紙工学に興味があったんです。そこで東北大学を卒業後、東京大学の大学院で折紙工学の第一人者である舘知宏先生のもとで学びました」 ――折紙工学とは何を研究するものですか。 「折り紙は形をダイナミックに変化させることができます。小さく折りたたんでスペースを節約したり、薄い材料でも折ることで構造の強度を保ったりできる。それを建築や航空宇宙、教育や医療などの分野に応用する研究です。様々な分野のエキスパートが、折り紙というひとつのハブを通して多彩な交流をしている、すごく面白い学問分野です」 ――その研究室時代に、折り紙技術を用いたプロダクト設計支援ツールを開発したそうですね。 「はい。谷道と共に、折り紙の技術を一般のデザイナーなどが容易に使えるよう、『Crane』というソフトウエアを開発しました。たとえば折りたためる家具を作りたい場合、立体の形と平面の形の両方を考えてデザインしなければなりません。それって2次元と3次元のパズルを両方解くようなものです。プロダクトデザイナーにそれを求めるのは酷な話です。しかしこのソフトウエアを使えば、立体の状態でデザインしたものを、自動で平面の展開図にできる。このソフトウエアは世界で約3万ダウンロードされています」 ――そうした折り紙の研究から、同じく形を変えることで様々な特性を生み出すメタマテリアルという技術分野にも興味を持つようになったわけですね。 「そうです。研究室の先輩に、当社の創業者である大嶋泰介(現Nature Architects 顧問)がいたんです。彼はもう博士課程を修了していたのですが、研究室によく来ていて、折り紙やメタマテリアルはものすごい可能性を秘めているという話で盛り上がっていたんです。しかし、実際にはまだ研究レベルで止まっていました。ここは会社を立ち上げて、しっかり産業の中に『カタチのチカラ』をインストールすべきじゃないか、という共通認識を持つようになった。それで大嶋が会社を立ち上げたときに僕も合流したんです」