「遺産額1,000万円超~5,000万円以下」がいちばん揉める…「相続争い」の実情と回避策【行政書士が解説】
「共有名義」以外の分割方法とは?
では、不動産を共有名義にしないためにはどう分ければよいのか? 不動産の遺産分割方法は3つあります。 ■現物分割 ~1つの土地を複数に分け、各相続人の単独名義で所有 現物分割とは、土地の現物を相続分に応じて分筆するシンプルな分割方法です。 ただし、土地の価格は間口や接道状況も関係するため、簡単には納得のいく分割案を決めることはできません。また、分筆前より分筆後の価値を下げないためには、遺産である土地の面積が一定規模以上であることが前提となるほか、建物がない更地であることも必要です。 そうなると、一般的な土地面積(30坪程度)の実家は建物を解体して分筆することになるなど、費用面からも現実的ではなくなります。 ■換価分割 ~売却し、お金に換えてから分配する 換価分割とは、遺産共有となった実家を関係相続人全員で共同売却し、売却代金を相続分で分配する分割方法です。相続人の誰も実家に住まない場合は売却の合意を得やすい一方、親の生前から同居している相続人(同居相続人)がいる場合で、かつ実家が十分な金額で売却できないときは、同居相続人が実家の退去より居住継続を希望して、共同売却に同意しないこともあります。 ■代償分割 ~1人が不動産を丸ごと相続し、他の相続人に対して「代償金」を支払う 代償分割とは、相続人のうちの1人が不動産の所有権をすべて相続する代わりに、他の相続人が本来相続するはずであった相続分に相当する金銭(代償金)を他の相続人に支払う分割方法です。親の生前から同居している相続人などは実家を単独相続する理由がありますが、代償分割には、実家を単独相続する相続人自身に代償金を支払うだけの資力が必要となります。
あえて共有する場合のポイント
以上が共有回避のための分割方法ですが、他方、十分話し合ったうえであえて共同相続して共有名義(融和的共有)とすることもあります。「いったん共有」とはするものの、今後の実家の取扱いについて、具体的かつ詳細に取り決めておくことが重要になります。そして、共同相続する遺産分割協議書とは別に、共有する相続人間で覚書を取り交わします。 例えば、近い将来の共同売却に異論がない場合、その旨を期限付き(〇年〇月〇日までに売却する)で合意しておきます。 また、実家を共同売却ではなく共同賃貸する場合は、 ・不動産の管理方法(誰が建物を管理し、修繕費等をどう負担するか) ・賃料の分配方法(誰が代表で賃料徴収し、どう分配するか) などを協議のうえで決めておきます。 さらに、相続人の1人が共有する実家に住む場合は、「家賃相当額をいくらにするか、どう支払うか」などを取り決めます。 この覚書が守られるかどうかは、今後の相続人間の関係次第といえますが、合意したことを形に残しておくことで、単なる口約束とするよりは、約束を守る意識が各自に芽生えます。
【関連記事】
- 71歳・高齢大家、家賃収入「月200万円超」で“困った”…「現金が膨らむ一方で相続対策が必要。でも不動産は増やしたくない」⇒行政書士が教える《解決策》とは?
- 不動産の共同所有はやめておけ…亡き妻の「姉」と共有名義人になってしまった男性。共有関係を“イチ抜け”するには?【行政書士が回答】
- 母の三回忌で、不仲兄から《実家売却》の提案が…。共同相続した「約70坪の古家付き土地」を“適正価格”で売却するには?【行政書士が助言】
- 【当てはまったら要注意】実は“地面師たち”かもしれない「ハイリスクな不動産取引」の特徴【司法書士が解説】
- 「父の所有地」に自宅を建てた長男…父亡きあとに陥る〈悲劇〉を回避するには【行政書士が解説】